1974年度作品、ロック史上最高の女性ヴォーカリストとして、いまだに人気のあるジャニス・ジョプリンのドキュメンタリー映画。ジャニス・ジョプリンが出演したテレビ番組のインタビュー、数々のライブパフォーマンス映像、そして、故郷のテキサスの同窓会に出席する姿なども収録されています。
ジャニス・ジョプリンのアーティストとしてのベストパフォーマンス集とも言えるライブ映像の数々に加え、彼女の人間性を物語るインタビュー映像など、貴重なドキュメンタリーであり、編集も申し分ないんですが、これは、あまりにも悲しい・・・。クラッシックロックのファンにはオススメできますが、感受性の強い方、気分が落ち込んでいる方には見て欲しくありません。ジャニス・ジョプリンが感じていた孤独感や疎外感に共感してしまったり、自分の事のように同情してしまう人が観ると、かなり落ち込みます。ヘタな恋愛映画などより悲しくなるので注意してください。それにしても、ジャニス・ジョプリンという人の音楽的な才能と、正直な生き方には、本当に感動させられます。こんな風に生きていきたい!と目標にしたい素晴らしい人間性に出会える作品です。
何も知らないくせに
この作品の中にレコーディング風景の映像で、プロデューサーがジャニス・ジョプリンを罵るシーンがありますが、これに関してはジャニスに非はありません。この映像を観ただけでは、曲のアレンジに協力せずに勝手な事をしているような印象を受けると思いますが、曲のアレンジ、演奏力に関しては、メンバー、プロデューサーの責任で、テクニックとセンスの無いミュージシャン、プロデューサーが悪いだけです。自分たちのアイディアの限界にイラつきジャニスに八つ当たりしているのが情けないですね。私もバンドをやっていたので、よく分りますが、ほとんどのバンドは、基本的に各パートのアレンジをそれぞれプレイヤーに任せて、その中でメンバーがアイディアを出しながらアレンジを完成させていきます。アレンジの才能の無いプロデューサーは、メンバーの演奏力、アイディアに依存してしまうので、アイディアを出さないメンバーに怒ったりするんでしょうね。このレコーディング映像で演奏しているプレイヤー、プロデューサーは最悪です。私も高校生の頃からバンドをやっていますが、こんなヘタで才能の無いメンバーと一緒にバンドをやったことはありません。ジャニスの名誉の為にも念を押しますが、このレコーディング映像に関しては、ヘタなプレイヤー、無能なプロデューサーが悪いのであって、長時間無駄なアレンジに付き合わされているジャニスは、被害者のようなものです。
本物と感じれば、何でも聴くわ
好きなアーティストとして、アレサ・フランクリンや、オーディス・レディングなどの偉大なヴォーカリストの名前を挙げて、敬意を表しているインタビューにも感心します。『まだ、自分はパワーだけで、彼らのようには歌えない』と告白するジャニスの洞察力と謙虚さに、彼女の人間性の素晴らしさが感じられます。
成功したって別に変わらないわ
ありのままの自分を表現し、自分にも他人にも嘘をつかないように努力していると語るジャニスのインタビューには感動します。カッコばかりで人間性の伴わないB級ミュージシャンが多くなった現代では、本当に新鮮に感じます。この人間性が、そのまま彼女の歌にあらわれているからこそ、みんな彼女の歌に感動するんだと思います。