空から振る雪をガラス越しに見つめる
綺麗な白い色
手を触れたガラスからは、ひんやりとした冷気が伝わってくる
今日は、遙か昔から続く聖なる日
“聖なる日に降る雪は、人々を幸せにする”
エスタにはそんな言い伝えがあるらしい
……でもだからってここまでやるのもどうかとは思うけど
窓の外を降り続ける雪
レインは、そっと扉を開けて、手を伸ばす
冷たい空気
手に触れる冷たい雪の感触
レインの体温でたちまち溶けてしまう、雪
「上手く出来てるわね」
この日降り続けるのは、科学の力で生まれた人工的な雪
見上げた空には、青空が広がっている
『偽物でもさ、これで幸せにが訪れるって思って貰えたら嬉しいだろ?』
数日前、子供達が寝静まった後のラグナの言葉
悲しい出来事が残した傷跡は完全に消えた訳ではないから
誰もが幸せに生きて欲しいと、その願いと共に生まれ出た雪
優しい思い
エスタに住む子供達の知らない、エスタに暮らす大人達だけの秘密
太陽の光を浴びて、きらきらと輝きながら白い雪が降り積もる
不思議で、暖かい光景
そうね、こんな風景は見ているだけで
「幸せになれるわ」
ささやく息が白く染まる

開け放たれた窓の外
降り続く白い雪
ほんの少し太陽の光がかげりを帯びて
きらきらと輝きながら降りつづる雪の量がほんの少しだけ多くなった

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