特別な日の始まりの朝は
あたり一面を覆い尽くした雪
昨日の夜は降っていなかったのにね
誰の足跡も付いていないその場所にそっと足を踏み入れる
小さな音で雪が鳴る
足を踏み出す毎に刻まれる足跡
歩く毎に聞こえる音に気を取られてどこまでも歩いていく
しばらくして、振り返る
真っ白な大地にまっすぐに伸びる一筋の足跡
ちょっと、少し寂しい
雲間から、太陽の光が降り注ぐ
空気がほんのり暖かくなる
雲を押し退ける様にして、顔を出す太陽
光が辺り一面に降り注いで
白い大地がきらきらと輝き出す
「……綺麗」
私はその光景に目を奪われて、ずいぶん長い間立ちつくしていたんだと思う。

「何やってんだ」
背後から突然聞こえた声
「アリオス?」
それは、ずいぶん聞き慣れた声で、私は笑顔を浮かべて振り返る
「この寒い中、何ぼーーっと突っ立てるんだ?」
「きゃっ」
頭の上からかぶせられた真っ白い私のコート
すぐ側に感じるアリオスの体温とふわふわの毛皮のコートの存在が
身体がずいぶん冷えていた事を教えてくれる
「一面真っ白で綺麗だなって……」
ごそごそとおとなしくコートを羽織りながら、小さな声で答える
「確かに綺麗だけどな……」
アリオスの口調に、私は身構える
「だからって、コートも着ないで、うろうろと歩き回ってるか?」
「ちょっとだけのつもりだったんだもの」
ちょっと何て言えない時間が過ぎたのは、不可抗力よね
何かを言おうと口を開いたアリオスが、何も言わずに背を向ける
「なら、そろそろ良いだろ?」
何を言っても仕方ないって考えたのが良く判って
私は複雑な気持ちで、振り返る
「あ……」
一直線に続く2組の足跡
連れ戻しに来たアリオスの足跡が、私の足跡の横に並んでる
「どうした?」
歩き出さない私に、ほんの少し心配そうなアリオスの声
「なんでもない」
私はアリオスの側に走り寄る
そして、並んで歩いて………

行きも、帰りも、並んで続く足跡
足跡だけ見たら、仲の良い恋人同士に見える?

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