目の前に広がった大きな川
河川敷に集まった無数の人々
河原に近づくにつれ、水分を含んだ涼しい風が吹いて居ることに気が付く

「のうりょうさい」

正面に大きく掲げられた手書きの文字を見つけ
河原へと降りようとした足が不意に止まる
楽しいそうな人々の様子
不規則に並べられた小さなテント
人々の輪の中に、見知った人影が見える
楽しそうな様子に、引き寄せられる様に足を進める
―――サァー
音を立てて、風が河面を走る
吹き付ける涼やかな風が辺りにこもった熱をさらっていく
一定のリズム、一定の強さで吹き寄せる風…………
『人工的な風だからな………』
都合良く風が吹くはずもないと言った言葉に返された答え
ゆっくりと視線を彷徨わせる
視界の中に、人工的なモノは見あたらない
河に浮かぶ小さな船
遙か遠く、下流で忙しそうに動く人々の姿
……………?
ふと感じた違和感
もう一度、視線を戻し、じっくりと目に映る光景を眺める
遙か下流に鎮座する巨大な山の姿
下流から涼しげな風が吹き寄せて来る
―――あり得ない現象
山に阻まれ、風が止まる事はあっても、風が吹き寄せる事は無いはず
じっと山を見つめていると
「あぁ、あれかぁ」
すぐ側で声が聞こえた
「アレが一番自然に見えるかと思ったんだけどな……」
感心したように語る声
やっぱり気づくもんだな……
声を聞きながら、こらす視界の中で、山をかたどったその表面が微かにめくれた
それは、僅か一瞬

河の水気を含んだ涼しい風が吹き抜ける

めくれた布の下に、巨大な扇風機が見えた

 
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