あの人の姿を思い浮かべるのならば
まず一番始めに思い浮かぶのはその背中
しなやかなその背中

ロックを思う時に私は顔よりも背中を思い浮かべる
だからといって人目を引くような特徴がある訳ではない
たぶん、他の男の人達と変わることのない普通の男の背中
それに実際の所、ロックの背中を見たことは余り無い
旅をしている間も1人先頭に立つというよりは、誰かと肩を並べたり、背かも見えない程遠く先を歩いていたり、皆の最後尾を歩いていたり
一緒に暮らしている今だって、ロックが背中を向けている時間はほんの僅か
人の気配や視線には敏感だから、直ぐに振り返って顔を見合わせる
だから、背中を見たという記憶は余り無い
それに………
実際の所はロックの背中を思い描く事は出来ない
だって、余り覚えていないから………
―――――――――
背中を思い浮かべるのは本当
でも、それは視覚的なものではなくて、感覚的なもの
共に背中を併せた時のあの感覚
始めてあの感覚を知ったのは、戦場での事
あの長い旅の間での事
始めて合った時からロックは無条件に私の事を受け入れてくれたけれど
私は、私の方はそういう訳にはいかなかった
立場やプライドや、様々なモノが私の中に渦巻いていたから
それが薄くなったのが多分あの瞬間
複数の敵に囲まれ、自然背中合わせの体勢を取ったとき
周りを敵に囲まれた時に鳥体勢としてそれは自然
けれど、ある瞬間お互いの背が触れた
鎧越し背中合わせに感じた体温、腕に合わせて動く筋肉
緊迫していた心が安堵したのに気付いて私は愕然とした
戦士である私にとって、ソレは背後の相手を受け入れている事の証明に他ならなかったから
たぶんあの瞬間始めて私は感情を意識して、自覚した

私が好きなのはロックの背中
命を預けられる頼もしい背
きっとロックを知る人達にとって、もっとも印象深いところは、と聞けば誰1人としてあげる事の無い箇所だろうけれど………
良く目にする所だから浮かぶのではなくて、安心できる場所だから一番に思い浮かぶ
だから、ね
言い難い事がある時
不安な事がある時
時折ロックの背中に寄りかかっている
―――そして今も

小さなプレゼントの包みを握りしめて、ロックの背中によりかかる
背中から暖かな温もりが伝わって
そうして………

―――時折訪れる恋人の時間

 
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