彼女の事を想うならば
まず始めに浮かぶのはその声
柔らかな音と暖かい響き

レインという人を語るとするならば、一番に上げるのは声の印象
誰の耳をも惹く美声という訳じゃない
他の奴等なら、声よりも顔の方が印象に残るのかも知れない
なんてったって、評判の美人だったしさ
けれど、俺の中での一番は声だ
柔らかな音の連なり
レインの声の中に感じる安心感
あの声を聞くと、心底安心出来るんだ
―――――――――
出会いは………
………出会いも何も、大けがを負って気が付いたら多分レインが居た
恋愛話をするときは、始めて顔を見たときの話をするものみたいだが、聞かれても正直な話覚えていない
顔を見たなんて言ってもほんの一瞬の事
怪我のせいで意識はもうろうとしていたし
あまりの痛みに、自分が今どういう状況なのか把握する暇だって無かった
意識も朦朧としていたし、意識が戻っても直ぐにまた眠りにつくで………
そういう状態が短いとはいえない間続いたな
だからな、顔を見るって言うよりも………
………ああいう時に印象に残るのは声なんだ
何を言われていたかなんてまるで覚えちゃ居ないっていうのに、声は覚えている
本格的に意識を取り戻して、始めに見たのはエルだったんだ
そして、レインの声が聞こえた
声を聞いた瞬間に感じたのは安堵、言いようのない安心感
たぶんあの瞬間に………

印象に残っているのは声
もうろうとした意識の中で幾度と無く聞いた励ましの声
レインの存在は“声”として認識されて、続けて身体に触れる手の感触
誰もが褒め称えた顔を認識したのは一番最後だ
恋に落ちた理由は無意識下の記憶
穏やかな声と、柔らかな手、そして暖かな気配
何処が好きなのか、何処に惚れたのかと聞かれたら
残念ながら明確な答えなんて出せやしない
ただ、耳に残る甘い響き
どんな言葉でも、どんな内容でもレインの声が運んでくるのは安堵
声を耳にする度に、心は落ち着いて穏やかになれる
今も、また―――

不思議そうな問いかけの声に、心が落ち着いて
ようやくプレゼントの小さな包みを差し出す
そうして………

―――改めて感じる愛しさ、穏やかな広がる優しい時間

 
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