空気が冷たい
澄み切った空の向こうに星の輝きが見える
吐息が白く染まる
遠くから聞こえる足音
顔を向けた先に待ち人の姿が見える
口元が笑みを刻んだ

慌てる様子も無く
急ぐ様子も無く
ゆっくりと近づいてくる人影
何でも無いような態度を取っているけれど
少しだけ乱れる足音が、内心の焦りを教えてくれる
あと数歩
手を伸ばせば届きそうな距離で、人の流れに遮られる
微かに動いた唇
小さな舌打ちの音
漸く人波が収まり、いつもよりも大きな一歩
どちらからとも無く伸ばした手が触れ
しっかりと握り締められる
手が引かれる
どこに行くとも告げられず、人混みの中へと足を踏み込む
同じように手を引かれた人とすれ違う
お互いに照れたように視線を交わして、こっそりと会釈する
手を引かれて歩く街中、幸せそうな人の顔が目に付いた

小さな荷物を手に持ってドアを開ける
後ろから伸びてきた手が、さりげなく扉を押さえる
「ありがとう」
ほんの少し、照れたように顔を背ける
相変わらずの様子に笑みがそそられる
背後で扉の閉まる音が聞こえる
冷たい空気が遮断され、温もりが身体を包んだ