空気が冷たい
澄み切った空の向こうに星の輝きが見える
吐息が白く染まる
遠くから聞こえる足音
顔を向けた先に待ち人の姿が見える
口元が笑みを刻んだ
「ごめんね、待ったでしょ?」
半ば賑やかな声にかき消されそうに成りながら、柔らかな声が告げる
「いや、大して待っては居ないぜ」
纏わり着いて来た身体を抱きとめながら答えたのは決まり文句
細い腕に掛けられた時計へと目を向ける
「そうね、時間はそれほどたっていないかしら?」
何もかもを見透かすような瞳が向けられる
待ち合わせた時間からは確かに時間は過ぎていない
ただ、時間よりもほんの少し待っていただけ
「つめたーいっ」
握った小さな手が震え、小さな声があがる
「ああ、ちっと冷えてしまったからな」
寒いところに居たんだからしかたないだろ
その言葉に暖かな息が吹きかけられる
「あたたまった?」
「そんなに直ぐに温まる訳ないよ」
一度離れた手が、手を包み込む
左右の手が暖かな体温に包まれる
「そろそろ、行きましょ?」
「「はーい」」
両脇から歓声があがり、両手が同じタイミングで引っ張られた
「でもどうしたの?突然外で待ち合わせなんて」
「ん、たまにはいいだろ」
待ち合わせをして、外で食事をして、買い物をする
ほんの少しだけ特別な日の夜の話
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