広い部屋のあちらこちらに置かれたテーブル
テーブルの上には、様々な料理が並んでいた
その大部分はもう姿を消していて
壁際のテーブルの上に並べられていたはずの飲み物も殆どがなくなっている
楽しげな人々の様子
時折聞こえてくる人々の笑い声
程よく酔いの回った人たちが時折大声を上げる
たまに起きる騒ぎは、その傍にいた人達が上手に間に入ってすぐに収まっている
「今日くらいは楽しくやろうぜ」
本当に………
聞こえてきた声に、同意する
せめてこの一時だけでも、争いのない世界
―――争いのない時間を
会場のあちこちに設置されたろうそくに火が灯る
はしゃぎながら火をつけてまわる子供の姿
揺らめく炎に上がる楽しそうな声
ろうそくの明かりが灯されると同時に、会場の灯りが落とされていく
薄暗く成った部屋の中で、はしゃいでいた子供達が静まり、不安げに辺りを見渡す
子供達を呼ぶ声
それぞれの親の元へと走り寄っていく
きらびやかな灯りとは違ってどこか薄暗い光
すぐ近くに何かが潜んでいる様な気がして
“怖い”
そう訴える声が聞こえる
子供達の様子を見つめていた私の肩に手が置かれる
振り返った先にあるのは問いかけの視線
なんでもない―――
そう言いかけて、私は言葉をかえる
「少し、ね」
理由がある訳じゃないけれど、同じように暗闇が少し怖く感じる
「何か居るかも知れないって思うとわくわくするんだけどな」
言葉と共に少しだけ強く肩が叩かれる
「それはあなただけだと思うわ」
灯りの届かない暗闇
その先には何が待っているのか
―――もしかしたら、敵が潜んでいるかもしれない
………そんな風に連想してしまう事は、悲しい
突然視界を色鮮やかな色が染める
思わず身構えた私の耳に聞こえたのは一際大きな歓声
「すごいよな」
そして、いつのまに現れたのか
中央に鎮座した巨大なろうそく
そこに灯された大きな炎
柔らかく暖かな光が辺りを照らし出す
大きな灯りが身体を包み込んでいる様なそんな錯覚を覚える
「雰囲気が出て良いと思わないか?」
背後から腕が回される
背中から温もりが伝わってくる
こちらを伺う様な視線に笑みを誘われる
「そうね………」
返事は、大きなクラッカーの音にかき消された
また一年平穏な日々が送れますように
どこかに居る誰かへと捧げる願い
そして
身体へと回された手をしっかりと握りしめる
今までも
これからも………
想いを込めた掌がより強く握り替えされた
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