街のあちこちから空へ向けて光が登る
暗いはずの夜空を青白い光が埋め
空が明るく照らし出される
新たな年を迎えた人々の声が幾つも重なる
それらの声に言葉を返す
年は改まり、公の役割は終えた
同じ様に“仕事”をしていた者達と視線を交わし
誰からともなく帰り支度が始まる
急ぎ足で帰宅する彼等と同じように、家へと続く扉をくぐった
身体を投げ出す様にして座ったソファー
大きく伸びをすると共に、無意識にほっと息を吐く
「お疲れ様」
掛けられた声と共に脇のテーブルの上にグラスが一つ置かれる
薄い金の液体と細かな気泡
「1杯くらい、付き合ってくれるでしょ?」
そう言った、彼女の手にも同じ飲み物が握られている
「あんま、飲めねぇけどな」
少しだらしないが、寝転んだままの姿勢で、手を伸ばす
ほんの少しの位置で手が届かない
「もう………」
手に触れるガラスの感触
手渡されたグラスを手に取る
零さないように手を固定したまま、ゆっくりと身体を回転させる
向かいのソファーへと腰を降ろした彼女と、自然に目が合う
同じタイミングで、グラスが掲げられる
「今年もよろしく」
互いに微笑みあってグラスの中身を飲み干す
のどの奥に、微かな刺激を感じた
窓の外に見える蒼く染まった空
地上から照らされた空は、勿論夜の色じゃなく
かといって昼の色でもない
深く吸い込まれて行きそうなそんな不思議な色合い
この日一日だけの光景を、ただ静かに共に見つめている
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