花束


良く晴れた青空
穏やかに煌めく蒼い海
眼下には切り立った岩壁と、白い波しぶき
海から吹く風が髪を揺らす

穏やかな日差し
穏やかな気候
小高い丘の上から見下ろす先には
生い茂った木々が、実りの季節を向かえている
金色の草原は、豊かに実る麦畑
金の草原の間には、楽しげに笑う人々の姿
草原を渡る穏やかな風が、金の穂を揺らす
知る事もなかった、優しい光景がここにある
強い風に金の波が起きる
脳裏に浮かぶいつか見た光景
夕陽の中の海
助けられなければ
知る事の無かった普通の生活、普通の人生、普通の幸せ
優しい時間を過ごせる様になって時々思う
もし、あの時助けられなかったなら
もし、あのまま絶望に沈んでいたら
小さな幸せも、人の優しさも、何も知らないまま
草原の向こうから、名前を呼ぶ声がする
大きく手を振る姿にそっと手を振り返す
こんな時間が持てないままで………
晴れ上がった青空を白い雲が行く
柔らかな日差しを浴びながら、セリスは鮮やかに咲き誇る花を摘む
両手一杯の花束
幸せな時間をくれた人への花束を抱えて、ゆっくりと丘を下る

腕から離れた花束は風に運ばれ海へと落ちる
「………ありがとう」
感謝の言葉は、静かに風に飲み込まれる
優しい時間をくれた人へ
私の初めの家族へ
伝える事の出来なかった感謝の言葉を贈ろう

海へと続く崖の上で
遠く何処までも続く海を見つめていた


〜FF6〜

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