帰還

何気なく生きてきた場所
何気なく通り過ぎた場所
時には無関心に
時には必死で
素通りしてしまった世界をもう一度

世界を救ったと言われても実感は湧かない
もともと世界を救うつもりでいた訳ではない
気が付いたらそうなっていた
だから、自分達が救ったという世界をもう一度見ておきたいとそう思った
確認の旅
色あせる記憶を辿る旅
「そんな事してなんになるの?」
淡々とした声が出発前に問いかけた
まだ豊かとは言えない感情
「さぁ、何になるか確認しに行くのかもな」
冗談に隠した言葉は本心
「理解出来ないわ」
そう言った妹に笑って旅に出た

待つ人が居る事は知っていたけれど
誰に告げる事も無く長い旅を続けた
そして辿り着いたのは、イーファの樹
崩れ落ちた巨木の幹は石の様に堅く、二度と蘇る事が無い
実際に眼にして感じる実感
もう、二度とイーファの樹に隠された真実が動き出す事はないという安堵感
そして………
脳裏を過ぎるのは、彼の事
悲しみとも怒りとも付かない記憶と感情
俺の中にあいつに対する怒りの感情はちゃんと残っている
それと同時に別の感情も存在している
同情にも似た、悲しみ?
「わかんねーんだ」
こぼれ落ちる言葉
今はまだ色んな出来事に整理が付かなくて、ちゃんと考えてやる事が出来ない
被害に遭った村や町を見た
悲しみに沈む人も見た
現実を受け止めて、これからを考えて、どうにかしようって頑張ってる人の姿も見た
あんたがやった事は、確かに許される事じゃない
きっと世界中の人達に恨まれるんだ
………本当なら………
世界ってのは思ったよりもいい加減
自分達をそんな眼に会わせたのが誰か、なんて知らないでいる人の方が多い
倒壊した町や家を黙々と直す職人達
『これだけの被害で済んだんだ、感謝しなくちゃね』
そう言って、気丈に笑った顔
様々な光景が浮かぶ
「考えて見ればそうだよな……」
戦争を仕掛けたのは、ブラネ女王
決して表に出てこなかった
未だ世間に公表されない事
卑怯だと思う半面
真実を教えてやる気にもならなかった
どうしてか、なんて聞かれても多分答えは出ない
あいつらが、スタイナーあたりが知ったら起こるかもしれない
よく判らない感情
これもその内、答えが出るんだろうか?

空が茜色に染まる
見上げた頭上に浮かぶのは………
消え去ってしまった星
もう一度世界を辿る旅はもうすぐ終わる
後少し……最初の場所で
何かが理解できたとは言えない、が
「そろそろ帰るかな」
俺の家へ
仲間達の元へ
自分の居る場所を見つめながら
新しい世界を感じながら
あの場所へ帰ろう


〜FF9〜

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