写真

飾りの無いシンプルな木枠
腕の中に抱かれた小さな子供
閉じこめられた瞬間の中に
幸せそうな家族の姿がある

日頃立ち入る事のない部屋
暗く光の入らない室内の様子に、無意識に伸ばした手が部屋の灯りを点す
初めて見た扉の内側は、所構わず乱雑に物が置かれていた
「…………」
眼に見えた状況に、視線が彷徨う
床の上に積み上げられた書籍で作られた道が部屋の奥へと続いている
その先にある机の上も似たような状況を作り出している
そして、正面に位置する筈の窓が見えない
本来なら部屋中を照らす筈の窓がいっそ潔いとほど、綺麗にふさがれている
………ここの部屋のカーテンが開いてた事ってないな
妙な程冷静に、そんな事を思いながら、スコールは作られた道を通り机へと近づく
「この中から探せって?」
すぐに届けて欲しいという忘れ物がある、と言っていた筈の場所には、積み上げられた紙類で埋もれている
酷い頭痛に襲われた様な錯覚に、スコールは軽い眩暈を感じた

“至急”の言葉はどうやら実行できそうも無い
大まかな辺りをつけて探した場所からは、一向にそれらしき物は現れない
どうやっても探せない捜し物と全く片づく様子もない状態
「…………」
いらだちを紛らわせるように舌打ちをし、乱暴に椅子へと腰を下ろす
次第に不機嫌になる感情のまま、スコールは目の前の書類を持ち上げる
ぽっかりと空いたスペースのすぐ奧に立てかけられた小さなフレーム
中に収められた一枚の写真
記憶にない程過去の情景
母の腕に抱かれた自分と隣に立つ姉の姿
伸ばした手が写真を取り上げる
幸せそうに微笑む家族の様子と綺麗に磨かれたフレーム
「……仕方ない……」
コレに免じて、もう少しだけ探してやる
小さく笑みを浮かべ、もう一度言われた場所を探し始めた

次第に広げられた捜索範囲は、机の周囲にまで及んだ
「…………無い」
この辺りって言ったよな?
改めて見つめた場所はすっかり片づき何一つ残っていない
「スコール?」
呼びかけの声と共に扉が開く
「こんな所で何やってるの?」
「母さん……」
スコールは途方に暮れたように呟いた


〜FF8〜

戻る