真っ白い砂浜と碧い海
突然目の前に現れた光景
何が起きて誰の仕業か、なんて聞かなくても解っている
―――だって、他にこんな事ができる人なんていないもの
私はわざとらしくため息をついて、そうして改めて周りの様子に目を移す
私が居るところは人の居ない海岸
それも南国の海、だと思う
そう言えば、少し暑いかもしれない
私の格好は南国の地には似合わない姿
………なんてことはとりあえず良いとして
私は背後を振り仰ぐ
「どうするの?」
ここが聖地じゃないことだけは良く解った―――解ってる
「休暇だ」
唇の端で笑うアリオスの表情に私はこっそりため息を吐く
こんな顔をするときは何か企んでいるとき
内容はその時によって様々だから解らないけれど、共通して居るのはこんな時は何を聞いても絶対に話してくれないっていう事
「………レイチェルに連絡は?」
アリオスからの返事はいつもの笑み
もう知らせた
………ううん、承諾済みかしら?
「これからどうするの?」
このままここにいるのならこの格好くらいどうにかしたいんだけどなぁ
暑いのもあるけれど、ここにいるにはおかしな格好
「とりあえずホテルでも行くか」
先に立って歩き出すアリオスの後を私は慌てて追いかけた

暖かな風が髪を巻き上げる
微かに聞こえる潮騒の音
それ以上に大きく聞こえる人のざわめき
海岸沿いの道路に並んだ出店の数々
少なくは無いけれど多くも無い人達が辺りを行き交っている
楽しげな顔
楽しげな声
幸せそうな人々
―――幸せな光景
私に直接は関係の無い人達だけれど、全てが私達に関係のある人達
「楽しそうね」
笑って言う言葉にアリオスがそっけない言葉を告げる
今の言葉は照れ隠し
アリオスも同じ様に嬉しく思っている
それくらいはね、解るもの
旅行者達が幸せな一時が送れる様に様々な配慮が成された場所
―――ここは有名なバカンスの地
だからこそ目に映る人々の姿はどれも楽しそうな姿
「………楽しいね」
小さく呟いた言葉に、アリオスの手が私の頭に触れた

耳の側で鳴っている様な波の音
淡い夜の闇の中に星々の姿が見える
ホテルの窓から見る海岸には楽しげな人の姿が見えた