「今日は仕事は早めに終わるヨ」
突然のレイチェルの宣言の声に、その声を聞いた人達は、『お疲れ様です』なんて他人事のような言葉を述べたけれど
「何言ってるの、今日はゼンインが早めに帰るコトになってるんだヨ」
そう、今日くらいはのんびりとした時間を過ごしてもかまわないんじゃないかしら?
ようやく仕事が終わる時間
アンジェリークは、こっそり聖地に流れる時間を操作する
外界と同じ時間の流れに………
私達が体感する時間は同じ
私達の上に流れる時間も同じ
こんな風にいつもよりもゆっくりとした時間を設定しておけば、宇宙で何かが起こったとしても、慌てることなく対応できるよね?
「だから、ミンナお休み、仕事は終わりにして帰りなヨ」
ワタシも帰りたいし、なんて冗談を交えてレイチェルが追い立てる様に残っていた人達を帰宅させる声が聞こえる
ここ以外の場所でも同じ
責任者への通達は何日も前に出されているから、どこでも似たような光景が繰り広げられているはず
施設に依っては、強引に追い出されている所だってあるかもしれない
次第に、戸惑っていた彼等の表情が嬉しそうな顔へと変わっていく
そして、楽しげに交わされる挨拶の言葉
「―――全員帰ったヨ」
レイチェルの言葉を聞いてアリオスが宮殿全体を力で覆い隠す
明日の朝まで
誰も戻って来れないように
再び仕事を始めたりしないように
「よし、それじゃあまた明日ネ」
力が全体に行き渡っている事を確認して、レイチェルが晴れやかに告げる
「のんびりしてきてね」
穏やかなことばを交わして、レイチェルが楽しげに出かけていった
「私達も行こう?」
アンジェリークはアリオスへと手を伸ばす
「で、何処に行くんだ?」
アンジェリークの手がアリオスの手を捕まえ、しっかりと握りしめる
「うーん、いろいろ行きたいところはあるんだけど………」
「あんまりよくばるなよ」
繋がれたままの手にアンジェリークは嬉しげに微笑んで
「………今日はこのまま帰ろう?」
“家”へ向かって歩き出した