広間から、賑やかな声が聞こえてくる
中庭を挟んだ廊下の向こう側
眩しいばかりの光が漏れている
見るともなく目にしていた光から目を離す
気配が近づいてくる
「また、こんな所に居ましたの?」
暗い室内に灯りがともる
「たまには、向こうに顔を出して見ませんか」
「いや………」
誘いの言葉に裏は無い
だが………
「もちろん、無理強いはしませんわ」
補佐官は微笑を浮かべる
華やかな賑わい
上辺だけを取り繕われたパーティー
ここではそんなことは無い
それは良くわかっている
「でも、今日は参加したほうがよろしくてよ?」
含みのある補佐官の言葉
「今日の料理は私たちで作りましたの」
「………ほう?」
時折、お茶会に菓子を作って持ち込んでいることは知っている
だが、料理を持ち込んだことは無かった
「それは確かに興味をそそられるな」
「それだけではありませんわ」
わざとらしく含みを持たせた言葉に、視線で問いかける
「私達が料理を作ることを聞いた守護聖達が、いろいろと作ってきましたの」
彼女の言葉に、“彼等”の姿が思い浮かぶ
「………料理など、つくれるのか?」
「作った方によって、様々、ですわ」
目にいたずらめいた光が浮かぶ
料理の質もそれぞれということか
「よろしければ、参加致しませんこと?」
極上の笑みが浮かぶ
「………まさか、料理を作れ、等とは言わぬだろうな?」
からかうように告げた言葉
「料理など、出来ますの?」
目を見張った姿に肩をすくめる
「まともな料理などしたことは無いな」
「そうですわよね」
何故か安堵した様子の補佐官に対し
「鳥の丸焼きぐらいは作れるかもしれぬが………」
悪戯心が沸き上がる
「あら、それは………」
困ったような補佐官の様子に、一人、鳥料理を頑なに拒否する者の存在を思い出す
「まぁ、それは良い」
我は、補佐官へと手を差し出す
「どの様な料理を造ったのか、見物してみるのも面白そうだ」
「それでしたら、早く行きませんと無くなってしまいますわ」
差し出した手に躊躇うことなく手が乗せられる
背後から、楽しげな笑い声が聞こえる
「その様だな」
閉じた扉に声が遮られる
数分後、彼等は賑やかな会場の中に居た
素材:SMAC