「狩にでも行ってくるか」
窓の外を見つめ呟いた言葉
「え?」
戸惑ったような声に壁に掛かったカレンダーを指差す
「もうすぐだからさ」
カレンダーにひっそりと付けられた小さな印
「そうね、でも無理をする必要はないと思うんだけど」
確かに食料には余裕はある
「ん、そうなんだけどな」
でもどうせなら、な
「………ちょっと行って来るよ」
「解ったわ、でも無理はしないで」
声に送られて家を出たのは数週間前
獲って来た複数の獲物
狙っていた大物は獲れなかったが、数は上々
近所へと配った後もまだ充分に数がある
「たまには豪華にするのもいいと思うぜ」
もう誰も覚えていないほど昔の記念日
年に1度のお祝いの日
世界が一度壊れてからは、豪華とは言えない………
いつもより、ほんの少しだけ多い品数
ほんの少しだけ華やかな料理
“お祝い”の言葉とは裏腹なささやかな記念日
「そうね」
獲って来た獲物を捌きながらセリスが答える
「………たまには俺が料理をするよ」
ふと思いつき口にした言葉
「あら、ほんと?」
旅をしている間は自然に行ってきたこと
「たまには良いんじゃないか?」
旅を終えてからはめったにしなくなった、けど
「肉くらいは焼けるぜ」
他の料理も少しくらいはできる
「味の保障は無いけどな」
俺の言葉に楽しそうに笑った
肉の丸焼き
いつもよりも具の多いスープ
いつもとは違った味
張り切ってつくったものの今までと大して変わらない品数
さほど、豪華とも言えない料理
「あんまり上手くできなかったな」
俺の言葉に小さく首を振って
「美味しいわ」
嬉しそうな言葉に自然に頬が緩む
「なら良かった」
その言葉と同時にロックも料理を口に運んだ
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