静寂
いつもなら夜中まで賑やかな声が聞こえる筈の街は物音一つしない
いつの時間でも煌々と灯る筈の明かりも最低限に抑えられている
そんな中を人々は集まり空を見つめる
ちらちらと目に見える星
時折時計に視線を落とし
時が進むと共に人々は外套を身にまとう
さらに時間は進み
人々の吐く息が白く染まり出す
やがて、空からひとかけらの雪が落ちる
幾人の手が雪へと伸ばされるのと同時に、清んだ音色が響いた
ふわふわと宙を舞う大粒の雪
柔らかな雪を受けとめながら人々は静かに言葉を交わす
また新たな年の始まり
また新しい期間を重ねた事を喜び合う
そして、人々は
宇宙の中心へと近い場所
聖地の聖殿がみえる場所
へと足を向け
聖地に住む人々への想い
彼等への感謝の念を捧げる
人々の前に淡い光が現れた
世界への祈り
宇宙の全てへと向けた祝福
世界を包み込むよう大きく翼を広げる
広げた翼から羽根が舞い落ち
舞い落ちた羽根が雪へと変わる
ひとひらの雪が落ちると同時に清んだ鐘の音が世界に響き渡る
世界はまた一つ年を重ねた
新しい1年の―――新しい周期の始まり
アンジェリークは舞い落ちる雪へと手を伸ばす
掌に触れた雪は冷たく
そして、真っ白な1本の羽根へと戻る
羽根を手にアンジェリークが笑みを浮かべる
同時に世界から届く、新たな始まりを喜ぶ歓喜の声
頭の片隅に浮かぶ人々の姿にアンジェリークは一層の笑みを見せる
「おめでとう―――」
呟いた言葉は想いと共に世界に満ちた
おめでとう
の言葉と共に新しい世界が明ける
やがて、静寂は喜びを込めたにぎわいへと変わった |