静寂
声を発する事を恐れるかの様に、潜めた声
密やかな人々のざわめき
人が大勢集まる場所とは違う
あまり名も知られていない場所には、まばらな人影
そして、闇に飲みこまれそうな中で申し訳程度に掲げられた篝火
幼い頃から幾度か訪れた事のあるはずの場所
全く見たことの無い表情に足が止まる
ココが知らない場所の様な気がして
ここから先、足を踏み入れたら、戻れない様な気がして
そんな筈はない
それは、ただの気のせい
いつもとは違った様子に
張りつめた空気に
ただ、飲まれそうになっただけ
詰めていた息を吐き出して足を踏み出す
踏みしめる砂利の感覚
耳に聞こえる小石がぶつかる音
ほら、何も変わっちゃいない
無意識の内に、強ばっていた身体から力が抜ける
再び歩き出した背中に、名前を呼ばれた

ほんの少し暗い場所
いつもと変わらない友人との会話
どこか怖いような、不思議な気配は消え去った
いつもと変わらない感覚
それでも、少しだけ特別な気がした




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