戦場の混乱
 
 
 
「解放者か、支配者か……」
進軍する軍の列から離れた場所で、ラグナはひっそりとつぶやいた
エスタ軍の突然の侵攻
恐怖をまき散らす魔女の存在
対抗できるだけの力を持たない国々は、ガルバディアの派兵を諸手を挙げ歓迎していた
「どちらも支配者には変わりがないだろう」
キロスの声が静かに、答える
エスタを追い払ったガルバディア軍がその牙を自分達へ向けるまでは……
「どちらがましか」
魔女による支配と
独裁者にならんとする男の支配
「魔女よりはまだましだろう」
巨大な軍隊としての戦い
「まだまし、か……」
そう、その程度の差だ
眼下に広がるのは、これから戦場となる場所
身を隠すように岩影に座り、ラグナは、他人事の姿勢で、二つの軍の様子を見ている
ラグナは、傍らに置いたマシンガンを引き寄せた
「早いとこ、終わりにしたいな」
この戦いも、くだらない戦争も……
警戒態勢
ラグナたちは、静かにエスタ軍の動きを見つめる
独特の姿をした、兵士達の姿
意味をなさない音の羅列
逆風が、ラグナの元へ伝わる音を遮る
戦場の片隅で小さな小競り合いが起きる
「…………ラグナ」
突出した兵士達がぶつかり合っただけ
だが……
「ちょーっとやばいかもしんねーな」
キロスと視線を合わせ僅かに肩を竦めて見せる
何がきっかけで、事態が動くかわからない
素早い動きでキロスが立ち去る
戦いなれない者達から順に、間近で起こった戦闘に引きずられていく
古参の兵士の制止も興奮した者達の耳には入らない
次第に戦場は拡大していく
………………
ため息と共にラグナは身を翻した
なし崩し的な戦闘
こんな戦いの始まり方を歓迎する者はいない
偶発的な出来事に司令部の対応が追いつかない
広がるのは、混乱
繰り広げられるのは、殺し合い
秩序を失った軍隊程使い者にならないものはない
小高い崖の上から、身軽に飛び降りたラグナの真横に、巨大な人影が現れた
「俺らは、向こうだそうだ」
ウォードが戦乱の方を指し示す
「キロスの奴、さては楽な方を選んだな?」
散歩へ向かうかの様な気楽な足取りでラグナは、その方向へ歩き出す
「適材適所ってやつじゃないか?ラグナが行ったらまとまる話もまとまらない」
「そーんな事はないぞ」
気楽な言葉のやりとり
それとは見合わない真剣な表情
混乱する戦場へ向け、武器構えると一気に走り寄っていった

エスタの軍勢が退却していく
ラグナはその様子を突き出た崖の上から見ていた
結果として、大規模な戦闘は行われなかった
エスタの魔女が何を考えているのかはわからない
無駄に流される人の命を憂いた故の行動か
……違うだろうな……
視線は遠ざかる兵士の姿を追う
まぁ、いいか
あんまり俺には関係のない事だものな……
無理にそう言い聞かせるとラグナは、ガルバディア軍の中へと静かに戻っていった

 
 



戦場シリーズの失敗作です(--;;)
(これを書き上げた後どうしても気に入らなくて表にある、“始まりの戦場”を改めて書いた)
もったいないからとりあえずUPしてみたという………
イレギュラー作です