墓標
 
 
荒れ果てた大地の上
昔の名残のまま残る傷跡
点在する鋼
捨て置かれたままの武器の数々
決して忘れることのできない
過去の光景
 
足元にある、風化した銃を拾い上げる
いつか、誰かが使っていたもの
見渡す限りの荒野
生き物の姿は見えない
 
この場所は、最後の戦いが繰り広げられていた所
この付近に住むものは居ない
ここにあるのは、忘れ去られた村だけ
朽ちた残骸が音を立てて崩れ落ちる
 
ゆっくりと歩む足元に、砂塵が舞いあがる
忘れられた鋼鉄の塊
大きく穴の開いた、戦車のそばで、足を止める
照りつける太陽の下、荒野の中一人立ち尽くす
暑く乾いた風が、通りぬけて行く
誰かが忘れたヘルメットが、武器と共に転がっている
 
ラグナは、そっと眼を閉じる
何を想うでもなく
何を考えるでもなく
ただ、静かに眼を閉じる
 
それは祈りに似た光景
静かに佇むその傍らで
消える事のない想いが語りかける
言葉に成らない声
明確な意志の無い静かな想い
 
感じるのは、悲しく優しい
人々の祈り
人々の願い
 
遠い昔、願いと共に訪れた平和
願いをかなえる為に流された血
 
願うのは永遠の平和
永遠に続く安らぎの時
大地にしみた問いかけの声に
答えることができない
 
訪れたのは束の間の平和
あのときから、再びこの地に争いが起こり
遠い未来に
再び起こる大きな争い
 
まだ、消えることの無い争いの火種
それでも、その時代が少しでも遠い未来の出来事であるように
悲しい時代が訪れることのない様に
何かに――誰かに――祈りを捧げる
 
 
長く争いの時代が終わらない

 


表の“式典”の際のラグナの想い
癒される事のない人々の願い