ソレは、軽快な動きで、モンスターを翻弄していた
複数のモンスターの攻撃を器用に避け、隙のあるモンスターを引っ掻き、隙間をみつけ四つ足になって走り抜ける
目の前で繰り広げられるその光景に彼等は只呆然と見入っていた
高く飛び上がり空中で身体をひねり、モンスターを切り裂きながら着地する
果敢に戦うムンバの姿………
彼等は誰からともなく顔を見合わせた
辺りを奇妙な空気が流れていく
鋭くムンバの叫び声が聞こえた
「助けるぞ!」
我に返った1人の言葉を聞き、それぞれ武器を構え車外へと飛び出した
さほど苦労する事無くモンスターの群れを退治し、大した被害を出さずにムンバを救い出した
ムンバ自身も大きな怪我はしていないようだが、小さな傷を無数に作っている
ムンバは、モンスターの体液で汚れた身体をしきりに気にするように手でぬぐっている
「大丈夫だったか?」
顔を覗き込むようにして問い掛けると、飛びのく様にして立ち上がり
「ぺこぺこ」
何度も頭を下げる
「いや、別に礼を言われる程の事はしていないから、な」
濡れたタオルを取り出しムンバの身体を拭ってやる
「礼は良いから」
改めて礼を言おうとするムンバを制し
「この辺はモンスターが多いから気をつけろよ」
送り出した
遠くで振り返り頭を下げるムンバを見、誰からとも無くため息がもれる
走り去るムンバの背を見ながら、偶然にも脳裏に同じ言葉が浮かんだ
『勇敢に戦うムンバの話など、いったい誰が信じてくれるだろう?』
と………