信じられない出来事
 
 
その日彼等は、エスタ市周辺の見回りを行っていた
モンスターに襲われる事、数回
野生動物を見かける事、数度
移動途中の民間人とすれ違う事2回
ここ数ヶ月にはない程平穏な1日だった
帰路の道を彼等は陽気に辿っていた
何事も無く1日が終る…………
その思いに多少の油断があったのかもしれない
車の行き先に砂煙を発見したのは、肉眼で見える距離になってからの事だった
「おい、なにがおこってるんだ?」
慌ただしく交わされる言葉
砂煙のせいでこの距離からは細部の様子は見えない
「ちょっと、待ってろ」
兵士の1人が、双眼鏡を取り出す
多数のモンスターの姿が目に飛び込んでくる
「モンスターだ!」
彼の叫びと共に、車内にはいっきに緊迫した空気が流れた
彼等は、合図もなく手に武器を取り身構える
次第に車が近づく中、モンスターに取り囲まれる様にして立つ者の姿が見えた
窓から身を乗り出し、引き金に指を掛ける
「まて!誰か戦っているぞ」
モンスターの中心を過ぎる赤い色彩が見えた
数人の舌打ちと共に、車は猛スピードで走り出した

ソレは、軽快な動きで、モンスターを翻弄していた
複数のモンスターの攻撃を器用に避け、隙のあるモンスターを引っ掻き、隙間をみつけ四つ足になって走り抜ける
目の前で繰り広げられるその光景に彼等は只呆然と見入っていた
高く飛び上がり空中で身体をひねり、モンスターを切り裂きながら着地する
果敢に戦うムンバの姿………
彼等は誰からともなく顔を見合わせた
辺りを奇妙な空気が流れていく
鋭くムンバの叫び声が聞こえた
「助けるぞ!」
我に返った1人の言葉を聞き、それぞれ武器を構え車外へと飛び出した

さほど苦労する事無くモンスターの群れを退治し、大した被害を出さずにムンバを救い出した
ムンバ自身も大きな怪我はしていないようだが、小さな傷を無数に作っている
ムンバは、モンスターの体液で汚れた身体をしきりに気にするように手でぬぐっている
「大丈夫だったか?」
顔を覗き込むようにして問い掛けると、飛びのく様にして立ち上がり
「ぺこぺこ」
何度も頭を下げる
「いや、別に礼を言われる程の事はしていないから、な」
濡れたタオルを取り出しムンバの身体を拭ってやる
「礼は良いから」
改めて礼を言おうとするムンバを制し
「この辺はモンスターが多いから気をつけろよ」
送り出した
遠くで振り返り頭を下げるムンバを見、誰からとも無くため息がもれる
走り去るムンバの背を見ながら、偶然にも脳裏に同じ言葉が浮かんだ
『勇敢に戦うムンバの話など、いったい誰が信じてくれるだろう?』
と………
 
 

 


ムンバです(^_^;
…………ムンバな事と、UP時期から見て一目瞭然ですがぁ〜没作品っす(^_^;;;
登場人物一部修正済みってことで…………
実はこれ、原型のままだとオチがつかなかった……ので廃棄したものでしたっっ
それにしてもタイトル長い……