偽りの戦場
すべては帝国の為に
すべては、皇帝の為に
それが疑う事のない真実だった
幼い頃から、教え込まれてきたこと
私は、それ以外の世界を知らなかった
帝国に敵対するものは、すべてが悪だった
そう、悪だった………
帝国の勝利は誰が見ても疑う事のできないものだった
もはや、戦う必要もない
だが………
「まだ抵抗を続けているのか?」
反乱者たちは未だ戦いをやめようとしない
負けることが分かっているというのに、何故戦いをやめようとしない?
それは、降伏前のささやかな抵抗などでは決して無い
まるで、1人でも多くの道連れを作ろうとでも言うような捨て身の……
兵士達は、何も応えようとはしない
セリスは、状況を自分の目で見るために歩き出す
四方を兵士達に取り囲まれた反乱者の姿が見える
絶望的な状況がわからないはずもないのに、彼等はその抵抗をやめようとしない
1人の男が不意に崩れ落ちる
それほど命を粗末にしたいのか?
それでも、男達は抵抗を続けていた
セリスがいる場所からは、男の生死は定かではない
だが、命を懸けなければならない事だろうか?
偉大な皇帝の元で帝国の民になる事が?
大変な栄誉ではないのか?
セリスは抵抗を続ける男達をじっと見ていた
最後の1人が崩れ落ちた
兵士達が殺到するのを見て、セリスは戦場に背を向けた
同じ兵士にも2種類に人間がいる
積極的に戦闘に参加する者と、戦闘を避けようとする者
皇帝の姿を尊敬の面持ちで見つめる者とその姿から視線を逸らす者
そして…………
元から帝国の民であった者と、新たに帝国の傘下に下った者
皇帝のやることは正しい
人々を新たな時代へ導く
……偉大な………
それもわからずにいる愚かな者達……
それは真実正しいのだろうか?
抵抗を続ける人々を見て、セリスは疑問に思う
決して歓迎されない自分達の存在
疑問を抱いたまま、セリスは戦場へと向かう
今はまだ、真実に気づかないままに
END
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