想い出
思い出深いシーンがある
物語でも、自分の人生でも
忘れられない場面、出来事、言葉……………
―――だけど―――
同じ時を経験しても、人によりその印象は大きく変わる
―――だから―――
それぞれがそれぞれの大切な場面を
懐かしみながら、そんな時間の話をしよう
初めての出会い
そして…………
長い時が過ぎて、ふとした瞬間にセリスは思い出す
印象が良いとは言えなかった出会い
感じたのは反発、そして戸惑い
そして………
言葉の意味合いが少しずつ変わった
野営のたき火が、赤く照らし出す
仲間達の寝息が微かに聞こえる
ロックは、黙って炎を見つめている
赤く照らされる顔
ふと、瞬いた瞳がセリスを見つめる
「どうかしたか?」
不思議そうな視線、声
セリスは、無言で首を振る
言いたいことがあるわけでも、聞きたいことがあるわけでもなく、話をしたい訳でもない
ただ、なんとなく見ていただけ
ロックの視線を受けて、今度はセリスがたき火の炎を見つめる
静かに時間が流れる
ロックの視線が外される
二人で黙ったまま、炎を見つめている
ふと、感じる不思議な感覚
穏やかな空気が流れていた
思いこみや、勢い
過去に対する後悔の念
誰でも良かった訳では無かった
だが、守れなかった分、今度は関わるすべてを守りたかった
それが変わったのは?
その意味が、その存在が………
眼下に海を収めて、船縁に立つ
空を行く船からは、遙かに遠い海
視線を上げれば、遠くに大地が見える
ロックは、同じ様に立つセリスの姿を見た
真っ直ぐに前を見つめる視線
強い意志、瞳に込められた意志
セリスがロックを振り返る
「ロック?」
小さく傾げられた首
なんでもない、と言うように、ロックは笑い掛ける
用事があった訳ではない、その視線に引きつけられただけ
その姿に見とれていた
ロックは、もう一度海を見つめる
そして、遙か前方を………
守るだけの、守られるだけの関係ではない相手の……
セリスの視線をなぞらうように
共に、戦う相手の思いを重ねるように、ロックは前を見つめる
見つめるセリスの視線を感じる
引き戻した視線がセリスのそれと重なる
不意に柔らかな笑みと出会う
わき上がる、暖かな想い
優しい空気が辺りを包んだ
懐かしい記憶になる頃に
お互いの大切な思い出を
時間をかけてゆっくりと語り合おう
―――そして―――
別々の思い出を1つに纏めて
―――それから―――
二人分の想いを思い出にしよう
私の大切な思い出は、あなたの大切な思い出に
あなたの大切な思い出は、私の大切な思い出に
END
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