復興
天からは日差しが射し込み
遠く、鳥の鳴く声が聞こえる
目の前には、柔らかく色づいた草原
朝露が集まり、滴となって滑り落ちていく
幻想的な光景
私は、身動き一つすることが出来ずに立ちつくしていた
頭の隅でこの光景が現実のものではないと、解っていたから………
そして、夢が覚めた
まばらに生えた緑
荒れ果てた大地
見渡す限りの荒野
私はまだ明け切らない太陽の下、現実を見つめている
ゆっくりと回復に向かっている世界は夢の光景にはほど遠い
人々の努力で、僅かずつ、緑は増えているけれど……
そう、努力によって………
この世界がいつ元に戻るのか、それとももう戻ることはないのか、何も解らない恐怖の中、人々は、ただ今を生きる為に過ごしていた
先を考える事をせず、自分たちが生きる為だけに、他の生き物を殺して………
「おはよう」
不意に、背後から声が掛かった
私は、慌てて、振り返る
登り初めた太陽の光が金色の髪に反射する
「どうしたの、今日は早いのね?」
まぶしさに目を細めた私の視界の中に、相手の姿が浮かび上がる
金色の髪をした若い女性の姿
あの日、小さな村に吉報をもたらした旅人の1人
そして今は、生きる為の知恵を授けた村人
「セリスこそ早いね」
太陽が鮮やかな光を放つ
辺りが涼やかな空気に包まれる
爽やかな夜明け
「今日の見回り当番なのよ」
そう言って、微笑むセリスの手には一振りの剣が握られている
村の安全の為の見回り
「朝早くから大変だね」
私の言葉にセリスは明るく笑う
「そうでもないわ、それに、小鳥たちは朝が早いから……」
『世界が蘇る前に、他の生き物が絶えてしまう』
そう言ったセリスの言葉があったから
私達は、種を蒔き僅かずつ植物を増やした
「そっか、朝食食べに来るんだ…」
折角植えた植物を動物達が食べ尽くしてしまわないようにこうやって、朝早くに見張りをしている
「彼等も生きているんだもの」
一言二言会話を交わして、セリスは足早に行ってしまう
私は、その背中を静かに見送った
やがて、緑が芽吹く季節
一面に緑が広がる光景を見ることができる
それは、まだ、限られた範囲であったとしても……
END
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