舞台裏
どうにか、国の形が整った頃
エドガーは、世界各地の情勢を知る為に、配下の者を旅立たせた
各地から、報告書が届く
報告書により、かつての仲間達の噂や活躍の様子が耳に入る
彼等はそれぞれの理由で、それぞれの土地で有名になっていた
そして、エドガーは面白い話を知った
遠く離れた島に緑があふれる島があるということ
そして、そこに住む2人の人物……
「これは是非、真偽を確かめなければ」
エドガーは、楽しげな呟きと共に、細かい指示を出した
数日後、フィガロ城には強引に呼び集められた人々が集まっていた
「さて諸君、ここに調査報告書がある」
真剣な口調で語るエドガーを見つめる人達の中に、ロックとセリスの姿はない
「それによると、だ………」
語り出すエドガーの口元にこらえきれないとでもいうように笑みが浮かぶ
興味を覚えたような顔、呆れたような顔、そして、好奇心を覚えた顔
仲間達はそれぞれの反応を返す
やがて、彼等の口からそれぞれの心情をあらわしたため息が漏れた
「祝いの品と言うことでどうだろう?もちろん、ロックには私達に黙っていた礼をするつもりだが……」
そこで、一度言葉を切り、エドガーはゆっくりと顔を見渡した
「きっと喜んで貰えると思わないか?」
悪戯を仕掛けるかの様な口調
「確かにそのままじゃあ、セリスが可愛そうよね」
腕を組み難しい顔をしてそう言う、リルムの目が笑っている
「セリスにはそうだろうけどよ……」
マッシュが複雑そうに呟く
「いささか、ロックが……」
生真面目に口にしたカイエンは、強い視線を感じて口ごもる
「この際ロックはどうでも良いのよ」
カイエンの視線の先で、リルムはきっぱりと言い捨てた
この際、派手に祝ってやろう
エドガーは宣言通りに次々と準備を始めた
そして、ほぼ一ヶ月の月日が流れた
「どう?綺麗でしょ?」
できあがった婚礼衣装を手にリルムが自慢げに胸を張る
「これ、セリスの………?」
とまどったようなティナにリルムは勢いよく肯定する
「そう、セリスの住んでる処に行って、ちょっと話つけて来たんだ」
衣装を作る為に、リルムはセリス達が住む村まで出かけ、近所のおばさんに話を付けた
どういう理由をつけたかは解らないが、これはおばさんが採寸したサイズを元にして、セリスの体型に合わせている
「きっと似合うと思うんだよね」
一見シンプルに見える白いドレス
「あのときの衣装に似てるな」
思い描いたのは入れ替わり作戦の時のマリアの衣装
「そこが狙いだ」
エドガーは、人の悪い笑みを浮かべる
あのときの出来事は、2人とも印象深い物を抱いている
「あのときと同じ状況に置かれてれば、式を挙げるのが嫌だとは言えないだろう?」
秘密裏に式を決行すると言っても、最後には2人の同意が必要になる
「別にそこまでしなくても……」
マッシュが呟いた言葉は当然の様に無視された
飛空艇が、遠い地に向かい飛び立っていく
その様子をマッシュとカイエンは複雑な気持ちで見守っていた
「いささか、ロックが気の毒な様に思うが……」
「兄貴もとんでもないことするからな」
数日前ロックの元にオペラ座の支配人から、緊急を要する手紙が届いているはずだ
名前を騙った訳ではなく、筆跡を知っているかもしれない、というそれだけの理由で、支配人自らにエドガーが書かせた手紙だ
手紙を受け取ったロックが、オペラ座を目指して旅立ったという報告は受けている
「リルムもでござる……」
2日後に到着するはずのロックは、もちろんオペラ座で何が起きるか知らずにいる
同じようにセリスも、詳しいことは知らされぬまま、セッツアーに連れられて来る事になっている
ロックに対しては、今まで知らせようとしなかった事に対しての、ほんの少しだけの意地悪
セリスには、純粋に驚かしてやろうという気持ち
飛び去った飛空艇の機体は見えない
「そう、上手く行くか?」
ずらした視線の先に、エドガーとリルムの姿が見えた
そして、式が行われた
セリスが幸せそうに微笑む
緊張に強張った顔で、ロックが歩いてくる
対照的な2人の様子に、エドガーは笑いをかみ殺しながら式を執り行った
友の幸せを祈ろうという思い
そして、ほんの小さな悪戯
感謝の眼差しと、複雑そうな眼差し
返す言葉は、祝いとからかい
賑やかに、久しぶりの宴は終わる
END
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