帰還
ロックが出かけたのは、2ヶ月前の事
予定では、後一週間ほどで帰ってくるはずだった
その日、突然轟音と共に、砂を巻き上げながら、飛空艇が地に舞い降りた
大きな音に慌てて家を飛び出したセリスが目にしたのは、家のすぐ側に着陸した飛空艇の姿
静かに舞い降りる
とは言い難いその様子にセリスは笑みを浮かべる
飛空艇の持ち主であるセッツアーなら、そんな操り方は決してしない
それに、こんなに家の近くに停泊する様な人って…………
船の中から怒声が聞こえてきた
もっと丁寧に扱えとか
触らせるんじゃなかったとか
悲鳴にも似た叫び声
ほら、やっぱり
思った通り、聞こえてくるのはセッツアーの声
セリスは足早に飛空艇へと近づいていく
ロックの事だから、きっと舵を奪い取ったのね
頭上から、ロックの声が聞こえてきた
そして、船縁に人影
逆光のせいでよく見えないけれど、あれはきっとロック
後ろを振り返り、何か言い訳をしている様に見える
そんな所は昔と全く変わらないのね
ほんの一瞬、世界中を旅していた時に戻ったようなそんな気分になる
そして………
尚も聞こえる声から逃れるかの様に、ロックは縁を乗り越え飛び降りてきた
「ただいま」
セリスを見つけ、ロックが笑いかける
「おかえり、………早かったのね」
飛空艇から、梯子が降りてくる
「ああ、タイミング良くセッツアーに会ってさ…………」
怒ったようにセッツアーが飛空艇から降りてくる
足早に家へと、ロックが駆け込んでいく
そして、その後を追うようにして、セッツアーが……
……故障、かしら?
セリスは飛空艇を見上げた
数週間後、根本から折れた操舵輪を修理して、飛空艇はようやく飛び立っていった
END
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