暗い夜の蒼
乾いた風
急激に冷えていく空気
数年ぶりに帰郷を果たしたその夜
マッシュは、城の屋上に登った
懐かしい砂漠の光景を見るため
見慣れた光景を見つけるため
『帰ってきたんだ』
城を見上げた時の素直な思い
そして、城に足を踏み入れた時の懐かしさ
兄と2人、思い出話に花を咲かせ
懐かしい顔に再開した
同時に、新しい出会いも……
王としての責務のある兄と別れ
1人城を巡り歩く
懐かしさと、物珍しさと……
やがて、物珍しさは寂しさに変わった
記憶する場所にあるはずの物がない
記憶する場所に居るはずの人がいない
見知った人の変わった姿………
時を重ね色褪せた品々………
ここにある物は全てが記憶と違っている
取り残されたような寂しさ
全てを置き去りにした代償
マッシュは引き寄せられるように塔の上へと足を運んだ
辺りに広がる砂漠
遠く山の稜線が霞んで見える
記憶したままの光景
無意識に安堵の息をつく
変わることの無い砂漠の景色
マッシュは、長い間砂の海を見つめていた
やがて
空に昇る月
辺りを照らす光
昔と変わらない光景