日溜まり
長旅からの帰宅、久しぶりの我が家の扉を開けると
大きな子犬に出迎えられた
「………………」
無言のまま、しばらく子犬と見つめ合う
なんでこんなのがいるんだ?
我に返り、家の奥へと声をかけようとすると
子犬は、突然くるりときびすを返して家の奥へと消えて行った
「なあ、あれどうしたんだ?」
テーブルの足下で我がモノ顔でくつろぐ子犬をロックは指さした
「おかえりなさい」
「え?ああ……」
上の空な返事
寝そべっている子犬から視線をはずそうとしない
………警戒してる?
ふと、思い浮かぶ疑問
「その子ね、ロックがいない間は物騒だろうからって貰ったの」
……まさか、ね
「貰ったのか……」
小さな声でつぶやくと、ロックは荷物を持って部屋を出て行った
『泥棒は犬が嫌いだ……』
脳裏に浮かぶ言葉
そういうのとは違うと思うんだけど
頭の中の声に抗議して、うずくまる子犬を見つめた
……嫌いだった?
腕組みして、子犬を見つめるロックの姿に、セリスはたった一言が聞けない
何度か口を開きかけ
気づかれないように息を整えて、ようやく声をかけようとした時
「これで、番犬の役に立つのか?」
ロックは、子犬の前足を掴みあげて、顔をのぞき込んでいた
「……警戒する様子もないし」
甘えた声を上げる子犬に不満げな顔
嫌いな訳ではないんだ
安心したような、気が抜けたような
「大丈夫だと思うけど……」
複雑な気分で返事を返した
それから数ヶ月
小春日和の暖かな冬の日
ロックを呼ぶセリスの声
日溜まりの中でまどろんでいた成犬の耳が声に反応して微かに動く
次第に近づいてくる足音
目を覚まし小さく鼻をならした
困ったようにこちらを見る黒い瞳
寝そべった犬の頭をセリスは優しくなでてやる
「お疲れさま」
愛犬を枕にして、ロックがまどろんでいた
END
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