新雪


 
背後から近づく足音
いつもは足音なんてしないのに今日は勝手が違う
いつも通り歩く足の下で、踏みしめられた雪が音を立てる
朝の早い時間
澄んだ空気と晴れ渡った高い空
しんと静まりかえった空間
微かに鳴る雪の音が、大きく響く
「……まいったな」
困ったような囁き声
思わず笑みがこぼれる
声に出さない様に必死で笑いを噛み殺して………
……今日は近づくあなたに気がつかないふりをしてみる?
と一定のリズムで刻まれる足音
他になんの物音もしない場所
雪に吸収される音よりも、辺りに響き渡る音の方大きい
間近で、足音が止まる
「………気づいてるだろ」
ふてくされたような声音
その様子に私は思わず吹き出してしまう
振り返った先に予想した通りの表情
「そうね…………」
笑いにかき消されて、続きは言葉にならない
がっくりと肩を落として、大きく一歩
踏みしめられた雪が大きな音を立てる
先ほどまでと違ったリズムで刻まれる足音
私は、笑いながら、その後をついていく
 
晴れ渡った青空と白い大地
ゆっくりと刻まれていく2つの足跡
いつもと少し違った朝の光景
END