一日


 
朝、温もりを求めてのばされる腕
布団の中の温もりと、求められる手に未練を残してベットを抜け出す
寒さで冷え切った皮、手に触れる剣の感触
家の外は降り積もった雪に一面覆われている
動きやすい様身軽な格好を選び、そっと扉を開く
流れ込んで来る冷たい空気
家の中が冷えぬよう、素早く扉を閉じる
予想外に大きな音を立て、扉が閉じた

大きな物音に、目が覚める
温もりを残したままのベット
視界に映る光景
寒さで曇る窓の外、晴れ渡った空が覗いていた

昼、草原に残る足跡
雪の上に手を尽き、足跡の様子を慎重に探る
小さな足跡、数頭の獣の足跡
残されて居たのは、獣の一家の足跡
森の奥へと続く足跡に危険は無いと判断し、立ち上がる
雪原に残ったのは手のひらの跡

窓の外にはまぶしい程の青空
コトコトと静かな音を立てる鍋
湯気を立てた鍋から、美味しそうな匂いがする

夜、冷え切った手が家の扉をそっと開いた
暖かな空気と、鼻孔くすぐる良い匂い
知らぬ内に強ばっていた身体が解きほぐされる
ゆっくりと閉じられる扉
冷たさに赤くなった手で雪を払い
しっかりと持っていた剣を置く
冷たく冷えた手を暖めながら、物音を立てぬようそっと歩く

不意に現れる人の気配
振り返れば、触れる冷たい手
慌てて差し出した、暖かなカップを両の掌で抱えている
窓の外には、ちらちらと降り始めた雪

平穏な冬の一日

END