歌声


 
朝の風を頬に感じ、目が覚める
僅かに開いている窓
まだ覚醒しない意識のまま、起きあがり伸びをする
開いた窓の外から、微かに聞こえる声
……歌声?
とぎれとぎれに聞こえる声の響きに耳を澄ませ、窓の外を伺う
微かなメロディー
聞き覚えのある声
……いない?
視界の範囲には人の姿は見えない
声の主を捜し、窓を大きく開き身を乗り出す
頭上から聞こえる声
声をかけようとして、考え直し窓辺へと座る
優しい伸びやかな声
滅多に聞くことのできない歌声
声をかけたらきっと歌うのを止めてしまう
聞いてる事に気づかれないように
物音を立てないよう、目を閉じ耳を傾ける
 
やがて、太陽が高く昇り始める頃
静かな歌声が止まる
屋根の上で動き出す気配に
慌てて、窓閉め
部屋を飛び出した
END