雨音
――豪雨の中の静寂――


 
小さく聞こえてくる音
何度も何度も繰り返される音
次第に目覚め始める意識に
激しく降る雨の音が聞こえてくる
薄暗い部屋
目覚めた視界に、雨の滴が見える
すべての物音をかき消す激しさで降る雨の音
窓を伝い流れ落ちる水の道筋
そんな様子をぼーっとしたまま見つめている
滝のように流れ落ちる雨
……今日は何をしよう?
降り止みそうも無いその様子に、今日の予定が変更を余儀なくされた事に思い当たった

激しく降り続く雨の音だけが聞こえる
小さな居間の小さなテーブル
冷めたお茶を飲みながら
窓を伝う雨を見つめ、2人無言で過ごしている
ちらりと視線を向けたテーブルの向こう側
同じように、止まない雨を見つめている
「………止まないな」
ぽつりと呟かれた言葉
「そうね………」
静かな会話
そして、再び訪れる沈黙

雨音が激しくなっていく
カップをテーブルに置く音
立ち上がり椅子を引く音
ゆっくりと歩く足跡
聞こえるはずの物音が、雨にかき消されて聞こえない
「…………………」
「え?何?」
「…………………!」
「聞こえないわ!」
声までも雨音がかき消してしまう
口を開き、何かを伝えかけ…………
辺りに響く雨音に諦めたように口を閉ざす
そして、ため息と共に、自分の席へと戻る
……なんの話だったんだろう?
何事も無かったように窓の外を眺める横顔
「…………ロック……」
掛けた声は、雨音にかき消されたのか、振り返らない
……なんの話だったんだろう?
じっと見つめる視線を追って、窓の外を見る窓の外へと視線を向ける
見えるのは、相変わらずの雨
大切な話って訳ではないのよね?
続きを話すつもりの無いロックの様子にそう思う

降り続ける雨
微かに弱まった雨音
「……暇だな」
ぽつりと呟いた言葉が微かに聞こえた

END