新しい住人
旅をするのに必要なモノ
旅をするのに、有ると便利なモノ
似ている様で、全く違う
旅人や商人
村を通り過ぎる様々な人
同じように、取引の為に、生活の為に
村を出る人、旅立つ人
小さいが豊かな実りを持つこの村へと訪れる人は多い
けれど
辺鄙な場所にあるこの村へ訪れるのは
かなりの労力が必要
「列車は無理だろけど、せめて馬車でも有ればずいぶん楽になるんじゃないか?」
ある日の夕刻
訪ねてきた村人達と、ロックが話をしている
集まったのはいずれも他の地と行き来の有る者ばかり
「確かにそうですが、馬ではずいぶん厳しい場所も……」
隣室のセリスの元から、力無く首を振る男の姿が見える
「ずいぶん良くなったとは言え、まだかなり魔物もいるしな」
真剣に話し合う男達の様子
聞こえないフリをしているセリスの耳に、先ほどから声高に話す彼等の声が、話の内容が聞こえてくる
彼等の話題は、『安全に』村を行き来する方法
それは、自分達の為では無くてこの村を訪れる人達の為
そして―――
「でも、馬車ってのは良い案だと思うんだよな」
「確かに、街道に出ない時は、村で働かせる事もできるし」
「何より街道を往復させればそれなりの収入には成りそうだが……」
乗り気になっている男達が決定することができないのは、出没する魔物のせい
豊かな場所には、魔物もまた数多く出没する
つい最近村を訪れた旅人も、旅の途中馬を失っていた
「うーん、なんかいい手は無いかな……」
その日夜遅くまで話し合いが続いていた
「チョコボを利用するのはどう?」
翌朝、食卓で、セリスはさりげなく昨日の話題を切り出した
「へ?」
不意を付いた言葉に、ロックが妙な声を上げ
「……ソレ、良いかも」
数分後、呆然と呟いた
数日後、数羽の丈夫そうなチョコボが村へと届けられた
新たな働き手と、貴重な交通手段と成る彼等は、村中の歓迎を受けた
実際に仕事ができるようになるにはもう少し時間が掛かる
けれど
『俺たち以外にも、村の外の世界を見て貰いたいじゃないか』
移り変わる世界の様子
小さな村の外へと気軽に出かけられる日が来るのもきっと近い
「これで、村の外にも行ける様になるんでしょ?」
「そうね、そうしたら、お父さんと一緒に出かけようね」
セリスの耳に、道角で交わされる母子の会話が聞こえた
END
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