祝賀


 
歓迎の音楽が聞こえる
荘厳な音楽
集まった人々の間から聞こえる声
精一杯の華やかさで催される
祝いの宴
世界を埋め尽くした強大な暗闇を追い払った“勇者達”への精一杯の気持ち

人々の声が聞こえる
喜びの声が幾重にも取り巻いている
戸惑ったような顔、誇らしげな顔
人々に囲まれた仲間達のそれぞれの表情
興奮し、夢中で話し掛ける人々の姿
それらを見ながら、彼はそっと人の輪を離れた

開け放たれた扉と窓から乾いた夜の風が入る
視界に映る荒れ果てた荒野
訪れる人全てを受け入れた大広間には、ごちそうも、喉を潤す高価な飲み物も無い
荒れ果てた世界で用意された精一杯の食物
まだ回復することのない世界
荒れ果てた世界を元に戻すのも
その為の努力をする事も
全てはこれから
今までの事を忘れ、これからの事を忘れあげられる、喜びの歓声
幸せに微笑む人達の、一時だけの喜びの時間

元凶が無くなった以上
これより悪くなる事は無い
それでも
夜が明ければ、再び始まる辛い時間

一夜限りの華やかな時間が過ぎて行く
 
 

END