命の力


 
人ってヤツはかなりしぶとい
なんとなく立ち寄った場所で報告がてら呟いた言葉
世界が滅んで、何もかもが失われたっていうのに、人ってヤツはそれなりの生活を取り戻している
目にするたびに姿を変える光景
良い方へと変化していく世界
そりゃあ、自然の力ってヤツもすごいんだろうけどさ
真っ先に復活するのは人の手が入った場所だ
―――別の意味でも人ってヤツはしぶとい………っていうかタフだ
例えば、こいつ
今、食べようとしたソレだってさ、前は無かった代物だろ?
グロテスクな姿に、
“これが食べ物なのか”
なんて言ってたよな
それが今じゃ当たり前にして食ってるだろ
―――良い事、だろ
人がしぶといのもタフなのもさ
そうじゃなかったら、ここまで復興なんて出来なかっただろ
………もしかしたら、滅んでたかもしれない

水のない川
草の無い草原
岩だらけの海
衝撃から目が覚めて、初めて見た光景
世界が滅んだ姿は、脳裏に焼き付いて離れない
そして全てに絶望する人々の姿
その中に居た一握りの人
希望を捨てず、必死で生きた人

いろんな場所を旅していれば
それなりに顔なじみが出来てくる
手近な所で精一杯の奴等
他の地域で生まれた食べ物や情報、知恵
どれもこれも、今世界に必要な物で
そのくせ、精一杯生きている人にとっては、手に入れる事の出来ない代物
旅のついでにそんなモノを運んでやれば、今の世の中歓迎と歓待
………まぁ、英雄扱いだ
ソレも最近出てきた植物だ
確か、異常に苦いが水が採れるって話だったか?

………さて、そろそろ行くか
良い具合に雨も上がったみたいだからな
ああ、そう言えば―――
最近、娯楽が復活してきたぜ
まだ街角の芸、レベルだけどな

帰り道、小さな広場に流れるつたない音楽
足を止める人の姿
楽しげな子供の声
生きていく上では不必要な事が受け入れられる
人の間に余裕が生まれた
復興は確実に進んでいる
あの時から10数年
………人ってヤツはしぶとい生き物だ
 
 

END