捕獲


 
『悪いけど、訓練施設に放つモンスターを捕獲して来てくれる?』
運悪くキスティスに捕り、『どうせ暇でしょ?』という強引な断定の言葉と共に、スコールは、強制的にモンスター狩りに送り出された

作業の効率化の為に、最近新しく導入された、モンスター専用の麻酔銃を使い、スコールは出会ったモンスターを次々と倒して行く
後ろから、強力な麻酔により眠りについたモンスターを運搬員が、順次回収している
「流石ですね」
本日の必要物質として、渡された弾丸も尽き果てたが故にモンスター捕獲の為のベースと成った場所へスコールが戻ると、感嘆の声が出迎えた
「……たいした事じゃない」
遠くから、モンスターを撃てばそれで終わりだ
至近距離での戦闘と違い、怪我を負う事もほとんどない
「いえ、いくら強力な麻酔でも、当たらなければ意味がありせんから……」
…………当てられない奴なんていないだろう……

捕獲したモンスターを連れて戻る彼等と別れ、スコールは、1人ガーデン近くの森の中を歩いていた
特に目的があった訳でもないが、強いて上げるならば、麻酔を使い、遠くからモンスターを捕獲していた事にたいする不満だろうか?
傷つけずに捕らえる事により、モンスターを捕獲した後の手間が減ったのは確かだ
以前はモンスターを捕らえる事自体も、実力がある者達にとっては訓練になっていた、だが、簡単に捕獲する事ができる今は………
もっとも、麻酔が採用されたのは、捕獲されるモンスターの数よりも、うっかり倒されるモンスターの数が多かった事も原因の一つではある
木々を回り込み、奥深くまで足を踏み入れたその時、巨大な影が、側面から現れる
不気味な声をあげて、アルケオダイノスが向かってくる
スコールは、落ち着き払って、ガンブレードを構えた
アルケオダイノスもスコールに取っては、恐れる程の敵ではない
『可能なら、アルケオダイノスも仕入れてくれる?誰かさん達が遠慮なく倒すものだから、数が減って……』
ガーデンを出るときに言われた言葉を思い出す
今更出て来ても捕まえようがない
運搬員は帰っていったし、麻酔銃も今は持っていない
都合良く弱らせたところで、持っていけないな
アルケオダイノスが叫び声をあげる、続いて、横殴りの風
余裕でスコールは、その攻撃をかわす
魔法の発動、続く銃声
アルケオダイノスは、地に横たわった

……いったいどうなっているんだ?
何匹目かのアルケオダイノスを倒し、スコールは首を捻る
個体数自体も多くないはずだというのに、あの後出会ったモンスターは、アルケオダイノスばかり
まさか、モンスターを捕獲したのが原因って訳でもないはずだ……
アルケオダイノスの死骸を前に立ち、スコールは、原因を考えていた
!!
背後から近づく気配にスコールは、勢いよく振り返った
「なんだ、こんなところにいたのか」
陽気に声をかけ、ラグナが現れる
………………
「こんなところで何をしてる?」
頭の隅をいやな予感がかすめていく
「うん?まあ、なんだ………ガーデンに行ったらこっちだって聞いたもんだから……」
よけいなことを
ふと、ラグナの視線が、スコールの背後に向けられる
「もう、仕事は終わったのか?」
背後にあるのは、モンスターの死骸
「……だったら何だ?」
また、何かよけいな事を……
「ちょっと手伝おうかと思ったんだけどな……」
困ったように言うラグナの手には、スコールが先程まで使っていたのと似た感じの銃が握られている
麻酔銃はエスタの製品だったな……
……………
モンスターの気配が近づいてきた
欲しいのはアルケオダイノス、だったな………

モンスターをガーデン内に運び終えた頃、再びモンスターを運搬するようにとの要請が下った
仕事を終えるはずだった彼等は、不満を抱えながら指定された土地へと向かった
出迎えたのは、眠りに落ちるアルケオダイノス
見張るように側にいたスコールの手には、返したはずの麻酔銃が握られていた
 

 

 
END