優しい記念日
(SideS)


 
自室で、セルフィは一心不乱に作業をしていた
「んんん、ちょっと不満やけど、こんなもんやろ」
ほんの少し不満げに呟いて、セルフィ手を止める
「ちゃんと、ラッピングもせんとな……」
箱を取り出し、品物を詰め込み、時間を掛けてじっくり選んだラッピングを施す
ほんの少し黄色が入った明るいオレンジ色
そして、小さなひまわりの飾りを付けてできあがり
喜んでくれるかな?喜んでくれると良いな……
楽しそうに、セルフィは、それを見つめていた

「……だから、ダメ?」
「これ位のイベント許可してくれても良いよね〜?」
期待を込めてスコールを見つめる
「…………………」
あー、もぉ、はっきりしぃや!
「小規模なものなら……」
よしっ!
「あんまり大きな物にはしないよ、仲間内だけだからっ」
問題あらへんな?
「あ、スコールも参加してよ〜」
スコールの気が変わらない内に、スコールが、否定の言葉を言う前に、セルフィは、強引に許可を貰った形に言葉を続ける
「………」
無言で見つめるスコールの視線を気にもせずにセルフィは、歩き出す
こういうんは、いったもん勝ちや
ま、多少強引でも、スコールなら、ちゃんと実行してくれるしな
これが、自分には何も言ってへんとかいうんやったら面倒なんやろけど
足取りも軽く、セルフィは次の目的に向かって歩いていく

「うそやろ、何でないんや」
自室で、セルフィは、半泣きになりながら、捜し物をしていた
探し回ったおかげで、部屋の中は荒れ、そのせいで余計に探しにくくなっている
「なんで!?確かにこの辺に……」
積み上がった物が音を立てて崩れ落ちる
物音によって我に返り、セルフィは、辺りの惨状に気づく
「こ、こういう場合は、一度落ち着いて考えなおしてみる……」
まず、あの辺に置いたんは確かなんや
それから………………
「ああああ!!」
荷物!
確か、近くに置いといて、突然用事入ったから、運んでもろて……
もしかしなくても、間違えた!?
冷や汗が流れて行くのが解る
どないしよ……
「とりあえず、どうにか訳話して、とりもどさんと…」
話せばきっと、大丈夫やとは思うけど……」
「自分で行った方が早いわ……」
荷物大量やったもんな、あん中から探してくれ、なんてこと言われへんわ
まず、連絡取って、どうにかしてエスタまで行かな
「やっぱ、スコールに頼むべきやろな」
いやがっても、こればっかりは、しゃーないわ
他に連絡の取りようあらへんもんな

嫌がるスコールに、無理矢理直通回線を開いて貰い、セルフィは、理由を話し、快く承諾の返事を貰った
「う〜、ちょっと自己嫌悪……」
会話の内容を振り返り、セルフィは、ちょっと後悔する
ため息と共に、手近な壁に寄りかかる
なんか、なさけないかも〜
ドアが開いてスコールが入ってくる
「……断られたのか?」
そんなわけないやんか〜
「大丈夫だったよ〜」
スコールが何か言いたそうな顔をして、結局何も言わない
言いたいなら言えば良いのに
「エスタ行きの件だが……」
スコールは、何事も無かったかの様に、淡々と話しだす
……あいかわらずやな〜
「ちょうど任務で、向かう者がいることは、いる」
「それに便乗!」
………なんか問題あるん?
スコールが、困ったように黙っている
「もしかして、重大な任務?」
無言で首が振られる
「アーヴァインだ」
ん?アーヴァイン??
「エスタに向かうSeeDは…………」
最悪や〜
どうする?
っと、スコールの視線で訊いている
「しゃあないやん、別の任務で行くっていうしかないわ」
ばれたらやばいけど、ばれたらばれたときやしな
「悪いけど、一緒に来て、話し会わせてくれる?」
こうなったら、スコールには、徹底的に協力してもらお

エスタ市街についた、二人をラグナは出迎えに出ていた
そのまま、科学者に連れられて行くアーヴァインを見送り、セルフィは、ひとまとめにしてあるという、荷物の場所へと案内されている
「時間とらせて、本当にすみません」
セルフィは、恐縮し半ば感動しながら、ラグナの後をついて歩いていた
「別にいいって、どうせ暇だったんだし」
ラグナは笑顔で答える
大統領がそんな暇な訳あらへんしなぁ……
やっぱり、気つかってくれてるんやろな
「あ、本当に暇なんだからな、今日は試射を見学するつもりだったし」
試射?
あぁ、アーヴァインの仕事の方やな
「よし、ついたぜ」
立ち止まったのは、街外れの一角にある巨大な建物の前
「エスタに来た荷物は、一度ここに地域事に分類されるんだ」
建物の巨大さに、セルフィは、呆然とそれを見上げる
こんなんの中から、さがせるんかな??
扉が開く
「……ガーデンからの荷物は……」
「はい、伺って居ります、先日のガーデンからの荷でしたら、指示通り個別に保管して置きました」
礼儀正しい、挨拶と共に、今度は職員が先に立って歩き出す
すっごい荷物やな
ブロック事に山と積んである荷物の中を機械が動いている
これは、迫力あるわ
バラムガーデンもすごいと思ったけど、上には上があるもんやな……
倉庫の奥まった位置へ位置に小さな扉が備えられていた
「こちらになります」
部屋の中に、規模的には、少量といえる荷物が置かれている
……なんか、さっきのアレみたら、大したことない気ィしてきたわ…………
「ごくろーさん」
ラグナの声に我に返ると、案内してくれた職員は、仕事があるのか、足早に立ち去っていった
「あ、ありがとうございました」
セルフィは、慌てて、職員の背中に向かってお礼を言う
あの荷物ん中から、これだけわけといてくれたんやもんな……
迷惑かけまくりや
「さて、この中から探すのは結構大変だぞ」
腕まくりしながら、ラグナが室内へと入っていく
「……ところで、その捜し物ってどんなんだ?」

結局手伝って貰って探しあてた荷物は、ちょっと包装が歪んでいた
見つかっただけましやな……
「あ〜、ほら、包装だけ新しくしたらどうだ?」
状態を見て、慌ててラグナが提案する
ん、確かに、そうやんな……中身が無事なんやし、大丈夫やろ
セルフィがほんの少し落ち込んでいる間に、ラグナは部屋の外へ出ていった
遠くから、微かに声が聞こえる
でも、エスタのお店ってよぉしらんし……
街中を熟知できる程、エスタを訪れた事もない
ガーデンに戻ってから、ちょっと時間もらって出かけるとか……
「今、エル来るからな」
戻ってきたラグナが不意に告げる
へ?エル……おねーちゃん?
「俺はよくわかんねーけど、エルなら、詳しいからさ……」
笑顔で伝えるラグナに、セルフィは、感動していた
やっぱ、ラグナ様やわっ

深夜、ガーデンの一室では、数人の人々が忙しく立ち動いていた
「セルフィ、コレはどこ?」
「ん〜、そこのテーブルにおいといて」
友人達の中でもセルフィは、一番急がしそうに動いている
「セルフィ、この料理……」
「まだダメ!」
料理を運んでいるゼルの姿を見て、セルフィはとっさに答える
「………食べるなんて言ってないぞ……」
不満そうに、呟きながら、近くのテーブルの上に料理を置く
「ごめん、なんかそんな感じして〜」
ゼルって、結構食いしん坊だよねぇ?
「つまみ食いなんか、するからでしょ」
「ええ〜、そんな事したの!」
キスティスも、みてんのやったら、ちゃんと止めてくれたらええのにぃ〜
「お、俺、アーヴァイン、読んでくる!」
「あ、逃げた〜」
ゼルが逃げる様に走り去っていく
「どうせ、呼びに行く所なんだし良いんじゃない?」
そやけどな、油断でけへんな〜
セルフィは、飾り付けが終わった室内を見渡す
うん、上出来、上出来

「おめでとう!」
驚いていた、アーヴァインの顔が次第に笑みを形作る
そして、照れながらも嬉しそうに、お礼の言葉を呟く
「どう?驚いた?」
「とっても驚いたよ〜」
大きく両手を広げて、肩をすくめて見せる
「なんか、様子が変だと思ったらこういうことしてたの?」
口調は文句を言っているのに、楽しそうに笑っている
「そうよ、セルフィの計画でね」
「だと、思った〜」
アーヴァインは、セルフィをしっかりと見つめる
「他にいないもんね」
アーヴァィンは、セルフィに向かって、微笑み掛けた

「これ、プレゼントや!」
すれ違いざまにプレゼントを押しつける
始めと同じラッピング
「え……」
とまどった様なアーヴァインの声が聞こえる
追ってくる気配はない
流石に、目の前で開けられるのは恥ずかしいもんな
唖然としていた、アーヴァインの顔を思い出す
さっきよりもおどろいてたな
ちゃんと、気に入って、つこてくれたらええけど……
明日が勝負や!

翌日セルフィは、アーヴァインが真新しい帽子を被っているのに気づいた
流石にアレは持ってへんかな?
一緒に贈った小さな人形
アーヴァインは、セルフィと視線があうと、帽子を持ち上げて笑いかけた

 

 
END
 
SideAへ