エルオーネは、庭を歩いていた 美しく整えられた庭園 足下を人工の小川が流れている 足を止め、川の畔へと座り込む そっと、川の中に手を入れる まだ冷たい水 そっと、水を掬い上げる 指の隙間から、こぼれ落ちていく 「やっぱり手助けした方が良いかな?」 水面に向かってエルオーネは語りかける 思い浮かぶのは、客人に対して悪戦苦闘しているラグナの姿 「……手強い、と思うの」 そもそも説得するとかしないとか言う以前に、話を切り出す事も出来ないかもしれない きっかけが掴めなくて……… 「頑固だから……」 ため息と共にエルオーネは、大きく水を掬い飛ばす 腕を振るった反動で後ろに倒れ込んだ 空には小さな雲が浮かんでいる 「……………結局2人とも頑固なんだけどね……」 そう呟いたエルオーネの脳裏に、昔レインが同じ事を言っていた事を思い出す 昔から、譲れないと思ったら、人の言う事なんて聞かなかった 顔をほんの少し横へ向けると建物が目に入る 庭に面した大きな窓を人影が過ぎた 一向に話が始まらないことにいらいらしているスコールが思い浮かぶ でも、頑固さの質が少し、違うけど…… 早く話せって思っているのに、自分から声を掛けたりしないのは意地になってるから そう言えば…… 「レインも頑固だったよね?」 上手な態度をとっていたから、あんまりそんな感じはしなかったけれど、どうしても知りたい事があった時なんて……… 「何も言わないけど、じっと見つめるんだよね」 …………… エルオーネはため息をついて起きあがった 「やっぱり加勢しに行こうかな……」 窓から、人の姿は見えない 「……だって、やっぱり不利だと思うし……」 誰が聞く訳でもないのに、風に向かってエルオーネは言い訳を続ける 「それにやっぱり家族がお客さんって、変だもの、ね……」 きっと、まだ要件を切り出せずにいる父親の元に足早に歩き出す 緊張して、どきどきする鼓動をゆっくりと落ち着かせる そんなに難しく考える事じゃないから ただ、弟に帰ってきなさいと告げるだけ ただ、それだけの単純な事…… END |