疑問
一般的な科目は問題無い
世界共通の分野も変わりは無いはず
問題なのは、特化している機械技術
そして、外に殆ど知られる事の無い歴史
エスタでの進学を目指すにあたって、障害になるのはその2つ
送られてきた資料に目を通す
きっと役に立つからと、エルオーネから送られて来た荷物の中には、受験勉強に必要らしいモノが詰め込まれていた
既に知っている事、覚えている事
必要な物として詰め込まされた知識
必要とは思えなかったが、詰め込んだ知識
その大部分は、スコール自身は特に必要としていないモノで、逆に言えば、コレから先の不安が解消される結果になった
半ば安堵を感じながら、荷物の奥底から一冊の本を取り出す
―――エスタの歴史書
外交を再開してそれなりの時間は経った、が、やはりまだエスタに対する知識は、それほど充実しているとは言い難い
スコール自身は一般の人々よりも、遙かにエスタと関わり合う機会が多かったが、ソレでも今現在のエスタの状況を把握する事で精一杯だった
国の歴史といった深い所には触れる機会が無い
助かる……
正直な感想と共に、本を手に取りゆっくりとページをめくる
こういった書物に良くある形態の前書きに視線を流し、尚もページをめくる
…………?
めくった紙の上には
見た事の無い文字が書かれていた
「ああ、そりゃセントラ文字だろ」
くつろいだ一時に突然割り込んできた通信
緊急の合図と通信相手に慌てたラグナが回線を繋げると同時に、示されたのは一冊の書物
挨拶も前置きも、説明も全部おざなりにしての質問に、訳が分からないままにスコールに答えを返す
「セントラ?」
画面の向こうでスコールが眉を潜めている
「ああ、近代セントラ文字って奴か?ま、逆に言えばエスタの古代文字って奴、最近は使われる事も無くなってるんだけどな」
手にした本へと視線を落とす様子を目にしながら、ゆっくりと席へと座る
「んで、いったいどうしたってんだ?」
「……いや」
何か言いかけて、止めてしまう
顔には決して出すことの無い苦笑
そういうところは、なかなか治らないな
「何もないって事は無いだろ」
言葉のニュアンスに、声にしない言葉を乗せる
―――何も無いのに『緊急』なのか?
「…………………」
適当な言葉を探しているが故の沈黙
画面に、スコールの元本のタイトルが映る
意外と言えば意外な、けれど納得出来るタイトル
………そういう事か
けどな、それは全然“急用”じゃないんじゃないか?
多分、確実に、スコールが気が付いたら怒るだろうが、口元に笑みが浮かぶのが止められない
急用なんて言うから、また何か変な仕事でもしてるのかと思えば………
気付かれない内にこっそりと笑いを潜める
目に見えるのは、言葉を躊躇う様子
………こんな事で躊躇い無く連絡をくれるだけ、うち解けてくれたって事だよな
そして、画面の中で、スコールが意を決したように口を開いた
「そりゃ、学術研究所だろ、そんな高度な知識迄求めたりしねーって」
躊躇わなかったと言えば嘘だ
勿論内心には色んな想いが交差してる
あまりにも色々過ぎて、自分でもどう思っているのか解らなくなる位に混ざり合っている
「エルもその辺りの事は詳しくねーからなぁ」
画面の向こう側で、ラグナが嬉しそうに知識を披露している
覚悟を決めて話した言葉は大した驚きも無く受け止められた
そして成り行きで告げられた会話
思っていたよりもずっと豊富な知識を持っている、……たまに基本的な部分を言い間違えているが
「なんなら、適当に良さそうなの送ってやろうか?」
穏やかに笑う声に緊張の色が混ざっている
相変わらず、色んな感情が混ざり合っているし
ラグナの事は間違い無く“苦手”だ
けれど………
「………頼む」
多分、この申し出は嫌じゃない
End
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