道行き


 
一番最後に事実を知るのは身近な人
そんな言葉が頭を過ぎった

スコールがガーデン卒業後の数多の引き抜きを徹底して蹴っていると知ったのは数ヶ月前
進路先をどうするのかという問いにまともな返答が帰ってこなくてみんなで呆れていたのが少し前の話
何処とも接触する様子が無い事から、きっとガーデンに残るのだろうと納得したのがつい最近
ついさっきまでみんなそのつもりで居たって言うのに、突然判明した事実!
スコールはガーデンに残るつもりは全くなくて、既に進路を決定済みだと言うこと
親しい友人の筈の僕達に何も言わないなんて、ソレは無いと思わない?

「ガーデンを卒業するSeeDの扱いが色々と変わっているから、資料にはしっかりと目を通して頂戴」
別に申し合わせた訳じゃないけれど、たまたま同じ時間に食堂に入ったアーヴァインとゼルとセルフィの3人はなんとなく一緒に集まって話をしていた
同じガーデンに所属していると言っても基本的に同じ事をする訳には行かない為こんな風に顔を合わせるなんていうのは結構久しぶりの事でイヤに話が弾んでいたら、どういう訳かサイファー達3人も話に参加していた
大騒ぎしている所に、資料やら書類やらを持ったキスティスが通りかかって話に加わった
「今度から卒業を迎えてもSeeDならガーデンに残留可能なんだっけ?」
資料をめくりながら、何気なく話をしていた
スコール以外の進路はみんな決まっていて
みんなスコール以外はそれぞれ誰が何処に行くのか知っていた
「そーいや結局スコールはガーデンに残るのか?」
「決まっていない所を見るとそのつもりなんじゃない?」
誰もはっきりしたことは知らなくて、たぶんそうなんじゃないかなんて話してたときに、タイミング良くスコールがやってきた

ガーデンを離れるSeeDに対して与えられる情報や権限
そういうものがいろいろと改正されたと聞いて、担当者だと言うキスティスを探しに来たんだが、どういう訳かSeeDが集合している
「提出書類をキスティスが持っていると聞いたんだが………」
聞くまでもなく、テーブルの上に積み上げられた書類の数々
書類のひとかたまりを手に取り、上から順に確認していく
………多いな
変更された箇所がそれだけ多いという事なのか、書類のか書類の数は十数枚に及んでいる
「ああ、それガーデン残留の他にガーデンを出る方も入っているから………」
キスティスの言葉に、スコールは書類を広げ2つに分類する
「そういえば、ゼルもガーデンに残るんだっけ?」
「家から近いしな」
聞くとも無しに話を聞きながら、2つに別けた書類の1束を手にする
「スコール、ガーデン残留用はこっちよ」
キスティスがよりわけた書類の残りを指さす
………………間違いはないな
確認し、視線を上げると周囲から突き刺すような視線を感じる
気が付けば、話を続けていたセルフィ達も一様に口を閉ざしてこっちを見ている
「………なんだ?」
問いかけるような複数の視線に聞き返せば
「お前、ガーデン残留じゃないのか?」
サイファーが真剣な表情で問いかけてきた
「違う」
返答をかえしたとたんセルフィ達が大声をあげた

「………まいったねぇ」
スコールが立ち去った後アーヴァイン達は力なく笑いあった
「てっきりスコールは残留組だと思ってたんだけど………」
スコールがガーデンを出る事に驚いて
スコールの行き先を聞いてもっと驚いて………
困惑して、脱力して、結局どうしてか納得した
「でも、良い事だよね」
スコールの行き先は“エスタ”
いろいろと利害関係を絡んで見てみれば複雑に見えるけど、よくよく考えてみればこれ以上に良い場所は無いのかも知れない
エスタなら、スコールの経歴を利用しようなんて思わないだろうし
「エスタだとさ、きっと軍には入れないんじゃないか?」
「ソレ、握りつぶしそうだよね」
たぶんSeeDの肩書きなんて綺麗に無視される
「………………」
のんびりと語り合う中で、ふと気付けばサイファーが1人難しい顔していた
「………またあいつと顔を見合わせるのかよ」
苦々しく呟かれた言葉
そういえば、サイファーもエスタに行くって言ったっけ?
一瞬後、食堂に笑い声が響いた

親しい人間でスコールの進路を知らなかったのは自分達だけ
本当の意味で身近な人はとうの昔に知っていて
受験対策にも力を貸しているという話
確かに良いことだと思うけどね
一つ聞きたいのは―――
―――何時の間に仲良くなったんだい?
 
 

 End