古い冊子
遠い昔の出来事
ずっと昔、偶然関わり合った人々
とある事情で携わった仕事
自分がした事を忘れた訳では無かったが
あの時は、状況があまりにも特殊だった
あの後に起きた数々の出来事
自分の人生を全て塗り替える事件の数々
だから―――
あの時の事はとっくに記憶の彼方
人に言われて、そういえばそんな事もやったなと朧気に想い出した程度のモノ
映画“魔女の騎士”
とある事情で、出演はしたものの
完成を待つ事無く彼等とは別れた
その後は彼等とは連絡一つ取っていない
結局出来上がった映画を見ることは無いまま
上映された事すらも知らないまま
当然映画の評判なんか知るはずも無く
随分長い年月が過ぎた
酷く長い間抱えていた懸念が一段落した
長い間、中断していた外交が再開した
様々な面倒ごとがようやく片づいて
―――どうやら俺は暇らしい
大統領が暇だなんて事はあり得ないだろう、なんて言う声が聞こえてきそうだが
事実は事実
エスタには優秀な人材が大勢揃っているお陰で、俺がどうにかしなきゃならない事なんてのはほとんど無い
だから暇になった俺は、長い間ほったらかしにしておいた荷物の整理にいそしんでいるんだが………
「こりゃ、簡単には終わりそうも無いな」
始めに手を付けたのは、半ば物置と化した書斎
机と、そこへ向かう道筋は存在するものの
その他の所は増え続けた本や荷物の山
「まぁ、時間だけはあるからな」
そう言って片付け始めたのは確か1週間ほど前だったか?
片づいているか、散らかっているのか解らないこの状況で、目にとまった一つの荷物
とっくの昔に捨てたと思っていた一つの思い出
古びた冊子は、表紙は剥がれかけ端はぼろぼろ
「懐かしいなぁ」
一向に片づかない書斎の隅で、ラグナはゆっくりと表紙をめくった
テーブルの上に置かれた古びた冊子
なんとなく、スコールは手を伸ばし目を通す
色褪せ黄ばんだ紙の上に綴られた印字
時折現れる読みにくい手書きの書き込み
ぱらぱらとめくっていたスコールの手が不意に止まる
あらためて最初の1枚からページがめくられる
文字を目で追ったまま、スコールは傍にあるソファーへと腰を落ち着ける
目が真剣に文字を追う
静かな室内に聞こえるのは紙をめくる音
誰1人部屋を訪れる事もないまま長い時間が経過して、指が最後のページをめくる
再びテーブルの上へと戻されたその表紙には“魔女の騎士”の文字が躍っていた
End
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