転機
物事にはきっかけとなる出来事があって
その些細な出来事が大きな転機になる事もある
始まりは思い出したくも無いがあの出来事
スコールに極秘で進められる計画は、その当日まで知らされる事無く過ぎて行くか、部外者であるはずのあの男から告げられる事が多い。
その時もそれはそうやって知らされた
「今度SeeDの映画を撮るんだって?」
繋がった回線から聞こえてきたのはそんな言葉。
「………なんの話だ?」
挨拶も何もなく突然始められる会話に戸惑ったのは初めの頃の事
最近は不本意だが慣れた
ある意味いつも通りの会話だが、ラグナの言う言葉が………
いったい何のことだ?
訝しげなスコールの問いかけに、ラグナが変だなとでもいうように微かに首を傾け
「バラムガーデンが宣伝の為に映画を撮るって聞いてるぜ?」
困った様な表情で告げた。
スコール自身は聞いたことの無い話
だが、聞いた事が無いからといって、一概にラグナの言うことが嘘だと―――情報が間違っているとは言えない過去の実績がある
「………………」
本当か?とも嘘だろう?とも言えず、スコールは視線で問いかける
「聞いたのは映画関係者の方からだな」
ラグナの言葉を聞いたその瞬間
「頼みがある………」
スコールは無意識のうちにその言葉を発していた
バラムガーデンの為の宣伝に映画を作る
その事自体はあまり賛成出来る事じゃないが、特に反対はしない
だが、その事をスコールが知らなかったということには作為を感じる
今までだって、ガーデンの宣伝の為の行為はいろいろとしてきた、その事にスコールが反対したことは無かった。
それなのに今回だけ何の通達も無かったと言うことは………
考えたくない事態だが
スコールは映画の撮影が終わる迄エスタへ“仕事”に出かける事にした
元々エスタに何かトラブルがあった訳じゃない
まぁ、SeeD派遣料はスコールが自分で出しているから、エスタとしては何も問題はない
むしろただ働きをして貰っている訳だからありがたいと言えないこともない
だけどな、まじめに“仕事”をしようとするスコールには悪いが、そうそう仕事を探すのもちょっと厳しい
だからといって、いくら使えるからと言って補佐をさせるって訳にもいかない
………普通の会社だったら問題なかったんだけどな
いくらエスタが寛容だと言っても、国の中枢部に部外者を食い込ませる訳には行かない
………充分食い込んでる気もするけどな
ラグナ自身は仕事、エルは学校で1人する事が無いのはスコールだけだ
なんとなく暇そうに見えるスコールの姿にラグナは色々と考えて、
「なあ、暇なら聴講しにでも行ってみるか?」
なんとなくそんなことを言ったのは、昼に見た学校関係に関する報告書のせいだったのかもしれない
暇を持て余していたことは事実だったから、なんとなくラグナの提案に乗った
教えられたのは何の変哲もない学校………だったと思う
滞在したのはまずは、1日
それが結局は数回に渡った
ガーデンとは違った学生生活は、案外楽しかった
おかげで一般人の知り合いも出来た
それがきっかけ
進路を決めた一つのきっかけ
End
|