| 意想 
 
 初めて目にした時は、その科学力に圧倒された
 エスタの真実を知ってた分驚いた
 そして、実情を知って、困惑した
 それから時間が経って、
 交流が深まった今
 無人の店や街のあちこちで見かける機械の類
エスタシティには、あちこちに進んだ科学力の証が見て取れる
 他の国では見ることの出来ない光景に、物珍しげに集まった他国の観光客の姿
 エスタの人々に取っては、珍しくも何ともない品だろうが、彼等に取っては初めてか、数える程しか目にしたことのないモノ
 物珍しさに機械に触れて、その結果に上がる歓声
 誰も気にもとめない箇所に使われるもっと高度な技術
 観光客の質問に、にこにこと愛想良く言葉を返して―――
 彼等の言葉の中には技術を誇る言葉は無い
 彼等が使う道具の仕組みを語る言葉も少ない
 高度な技術を隠すのは、自衛の手段だと理解出来る
 エスタの技術力は、他国―――特にガルバディア―――にとっては脅威以外の何物でもない
 過ぎた力を持てば、排除しようという力が働く
 それを回避する為の自衛の手段
 それは当たり前の事、当然の事ではある
 だが―――
 分かり難い場所で隠すことなく使われる技術
 それは目にするモノが見ればすぐに気がつくはずの事
 エスタの人々が好む、有人の店舗が続く通りへとスコールは足を向ける
 建物の中には高度な技術が当たり前の様に使われている
 ひっそりと、それでいて堂々と
 こんな光景に沸き上がる疑問
 自衛する気が本当にあるのか?
 そんな事を思ったのはずっと昔の事
 大統領官邸
大統領の私邸と国の最重要機関がほとんど一緒になった場所
 敷地は同じでも建物は別だとか
 入り口も間逆の方向についているとか
 両方の敷地を直接行き来するのは大統領以下数名だとか
 そんな事を知っていても、今居る場所が私邸の部分だとは解っていても、目の前に広がる光景に意見する人はいないんだろうか?
 室内にラグナの姿は無い
 「あっ、スコール」
 扉を開けた所で立ちつくすスコールに気が付いたゼルが近づいてくる
 「………何をしている」
 家主の居ないソファーでくつろぐ友人達の姿
 家の中にも、あの騒がしい気配は感じられない
 知り合いとはいえ、この状況は問題じゃないのか?
 「ちょっと顔出したら、留守番たのまれてよ」
 「………留守番?」
 私邸とは言っても、機密の1つや2つ在っても可笑しくない場所で、部外者を留守番?
 そんな出来事と共に激しい頭痛を感じたのも、随分前の事
 「あっスコールさん、丁度良かった」
大統領の執務室へと向かう途中、声をかけられた
 「大統領の所へ行かれますよね?」
 振り返った先に居たのは、もう何度も会った書類を抱えた大統領秘書の1人
 「ついでですので、コレも持って行ってくれませんか?」
 差し出された書類の束を、内心ため息をつきながらスコールが受け取る
 「重要事項なのですぐに目を通すよう伝えてください」
 言うだけ言うと、他に用事があるのか、足早に立ち去っていく
 「………重要?」
 告げられた言葉にスコールが考えるのは、ラグナへと確実に渡す方法と、すぐにでも処理をさせるにはどうすれば良いかと言うこと
 重要な書類を部外者の手に渡す事に対する不信感は無い
 拒否権無く、嫌でもエスタとつきあう内にこの国に慣らされた
 適当さといい加減さ
 エスタという国はそういう国で………
 それでいて、最も重要な事は綺麗に隠匿してしまう
 今渡された書類にしても同じ事
 重要な書類には違いないだろうが、別に誰が見ても構わないモノ
 国も人々も
 開放的でどこまでもいい加減で、真実はしたたかで最も油断のならない
 そう思ったのは幾分前の事
 エスタという国は、おかしな国だ
それが今の感想
 
 
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