探索
静まり返った屋敷の中
微かな音が聞こえる
途切れ途切れ聞こえる音に誘われて屋敷の奥へ
日頃足を踏み入れることのない場所へと足を踏み入れる
一定に保たれているはずの室温
普段人の入らないこの場所は、温度が低い気がする
きっと、気のせいなんだろうな
足を踏み入れるほどにはっきりと聞こえてくる音
―――音楽
聞こえてくる音楽は、ずっと昔聞いた気がする音楽
音の発生源
扉の前で足を止める
途切れることの無い音楽に、そっと扉を開けた
日頃足を踏み入れることの無い場所
大きすぎる屋敷は、まだ一度も足を踏み入れたことの無い場所が存在している
ぽっかりと空いた時間
なんとなく何時もの場所とは違う
まだ行ったことの無い場所へと足を踏み入れたのはただの気まぐれ
長い廊下を歩いて
始めは覗いていた扉
幾つも続く扉の数々に中を確かめるのも面倒くさくなって
ただぶらぶらと足を進める
とりあえず、端まで歩いてみようかな
並んでいる扉と、窓の外を眺めながらゆっくりと足を進める
同じ間隔で並んでいる同じ形の扉
大して変わらない光景が続いていたけれど………
足を止める
今までとは違った扉
一つだけ違う形に引き寄せられるように扉を開いた
埃ひとつない部屋
けれど長い時間、人が足を踏み入れたことの無いだろう部屋
扉を開いた瞬間、空気が動いた気がした
部屋の真ん中に置かれたピアノ
壁際に置かれたオーディオ機器
無意識の内に足が進んで
ピアノの前で足が止まる
蓋を開けて鍵盤に指を落とす
部屋に音が大きく音が響いた
スピーカーから音楽が流れる
「おじさん?」
椅子に座ったエルオーネが不思議そうにこちらを見つめる
「音が聞こえたからさ」
ラグナの言葉にエルオーネが納得したように頷く
「偶然ここを見つけたから」
本当は弾いてみたかったんだけれど
エルオーネの視線の先には蓋の開いたピアノが見える
やってみようで弾けるようなものじゃないんだろうな
「なんなら、習ってみるか?」
何気なく口にした言葉にエルオーネが勢い良く反応した
End
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