パズル


 
改めて何かをするには足りなくて
何もしないのは手持ちぶたさ
そんな、ほんの少しの空き時間
時間の潰し方は
何をするか考えるだけで終わったり
その時によって様々だが
時間を置いて何度か繰り返される暇つぶしがある

ぼんやりとソファーに寝ころんで
何をするかな
いつもの様に考える
とりあえず彷徨った視線はテーブルの上
綺麗に片づけられた底には暇つぶしの道具は何も無い
ただ、テーブルの隅に置かれた1本の鉛筆
「そーいや、アレがあったよな」
数ヶ月前に放りだした雑誌を思い出しラグナはマガジンラックへと足を向けた

「なんだっけかなぁ」
数ヶ月ぶりに開いた雑誌に言葉が漏れる
些細な空き時間にこつこつとやっていたパズルの数々
その幾つかは既に終わっていて
大部分は手つかずで
あとの少しは途中で投げ出されている
「さすがに覚えてないしな」
途中まで手をつけた部分に記された書き込み
それに何の意味があるのかが思い出せない
「まぁ、いいか」
まだ手をつけていない所は沢山残っている
ここは今はやらなくてもいいだろう
「そのうちなんか思い出すかもしれねぇしな」
パズルの解き方なんて、どうやったって、同じ解き方にしかならねぇだろ
ページをめくり、まだ手をつけていない箇所へと目を通す
「えーと?」
鉛筆を片手に書き記された文字へと視線を落とす
全体へと目を通し、まずはわかりやすい場所へと鉛筆を走らせた

明かりが灯る室内
雑誌を手に悩む姿
「そろそろ止めたら?」
テーブルを挟んだ向かい側でエルオーネが食後のお茶を飲みながら声を掛ける
「んーーー」
何度目かの生返事
いい加減ご飯も冷めたと思うんだけどな
夕食の用意が出来て声を掛けたのはもう1時間以上前の事
冷たくなったら食べられない料理を作ったつもりは無い
少し手が離せなくて、食事の時間がずれ込むなんて事も無いことはないけれど
どうせなら暖かい内に食べて欲しいんだけどね
………………
鉛筆を持った手はさっきから少しも動いていない
当分終わらなそうだなぁ
エルオーネは思わず深くため息を吐いた

数週間後
エルオーネはテーブルの片隅に置かれた雑誌を手に取りそっとマガジンラックへとしまった
 

 End