うわさ話の真実


 
今世界で最も注目を集める国と言えば、エスタだ
それなら、今世界が最も注目する機関と言えば?
―――答はバラムガーデン
世間が注目すると言うことは、ほんの些細な出来事でも話題になりやすいと言うこと
そして、話題になると言うことは―――
可笑しなうわさ話が広まりやすいとも言うこと
ここ最近、どこかの誰かが流す根拠のない話の応対にバラムガーデンの人々は疲れ切っていた

「………おかしな話を聞いたんだけどよ」
ガーデン内のあちこちで繰り広げられる会話
どこかの誰かの作り話が幾度となく話題にのぼる
その大半は、ガーデン内で生活する彼等にとっては在るはずのない事実で、ただの笑い話で話はおわる
けれど、噂話の中には無視できないモノも含まれていて
例えば―――近々“ガーデン”という組織が解散する
例えば―――セントラ文明の遺産であるガーデンが接収される
例えば―――SeeD試験が厳しくなる
例えば―――4番目の“ガーデン”が創設される為、教師を募集中だ
ソレが一部の生徒を不安にさせ
そして、上層部への問い合わせが殺到する
幾つも届く問い合わせの度に問い合わせた者へと返事を送り
場合によっては、公式発表を行う
問い合わせられた事柄のおおよそ9割は根拠のない話
残り1割だって噂そのままのものなんていうのはどれだけあったか………
そんな事が積み重なれば、新しい噂話を聞いた時もまずソレはただの嘘だと思う
ガーデン内部が漸くその状態へと落ち着いた頃
小さな噂が囁かれ始めた
けれど、それは今までの過程のお陰で大きな話になることはなく
ガーデン上層部に問い合わせる者も誰も現れなかった
現れては消えるその噂に彼等が気づいたのはだいぶたった頃
耳にしたその噂話に彼等は揃って頭を抱えた
―――噂が初めて真実だったから

「いつの間にこんなに広がっていたのかしら?」
どこか遠い目をしてキスティスが呟く
「広まっちゃったモノは仕方ないと思うんだよねぇ、問題は噂を誰も信じちゃいないって所だよねぇ」
アーヴァインが乾いた笑い声をたてる
「まぁ、その気持ちわからなくもないけれどさ………」
ゼルが零した言葉に、彼等は一様にため息を零す
「せめて誰かが聞いてくれれば良かったんだけど………」
ここまで嘘だって、信じられてる状況だとどうしても話にくいわよね
それに、聞かれもしないのにわざわざ公言して回るような事でもない
………立場上そうとばかりも言えないけれど
「それで、どうするの?」
「どうするべきかしらねぇ」
セルフィの問いかけに答えたキスティスの声はどこか投げやり
「とりあえず、噂の本人に話してみるべきじゃないかなぁ」
どうせこうやって話していた所で、結論が出る訳でも無いんだし
「………そうねぇ」
「本人に話したところで、事態が改善するとも思えないけどなぁ」
この場に居ない本人―――スコール―――の顔を思い浮かべ、彼等は幾度目かのため息を零した

“エスタ”とスコール何か関係があるらしい
エスタ大統領とスコールは血縁関係らしい
平和な世界が訪れてしばらくしてから、ガーデン内に広まった噂話
耳にした彼等は誰一人本気にせずに居た“真実”

「よっ、スコール知らねぇ?」
私人として、時折バラムガーデンへと訪れる“エスタ大統領”の姿
「あ、ラグナさん………」
時が過ぎ、今では良くある出来事の一つに落ち着いたが………
“真実”を誰がどうやって伝えたのか、スコール達は誰も知らない
 
 

 End