必要な事
回されてくる書面を確認しサインをする
補佐官達の手を経てここまでたどり付く書類には、目にしただけで許可出来ないモノなどは混ざってはいない
誰が見ても許可出来ないものは、補佐官達の手に渡ることも無い
幾つもの人の手を経て
何人もの人のチェックを受けた
また1枚、軽く目を通し、問題なしの判断と共にサインをする
時折交わされる会話と、紙の音だけか響いていた
いつもの執務室からドアを一つ隔てた場所
“休憩室”にはベッドが備え付けられ、ちょっとした小間物が備えられている
仕事が忙しい時、戻る事は出来ないが、休息が欲しい時に使われるこの場所は
かつて、頻繁に使われていた場所で
今はほとんど使われる事の無くなった場所
久しぶりに足を踏み入れた部屋をゆっくりと見渡す
毎日の様にこの場所を使っていたのは、“大統領”なんて役職についた頃
やる事が多く、この建物から外に出る事なんかまず無かった
建物以前に、この辺りから動く事も無かったかもしれない
まぁ、それも遠い昔の事
あの時は、国の仕組みも動かし方も解らずただ必死でやれる事をしていた
それは俺だけじゃなくて、あの時集まった奴らの大半がその状態
とりあえず魔女の脅威を取り除いて
洗脳されていた人々を解放して
そして露わになった幾つもの問題
幾つもの問題に向き合い、取り組み
………知る事になった事
すべてを掬い上げる事は出来ない
何かを切り捨てなければならないということ
話し合い、悩み、導き出された結論
そのすべてが正しかったとも
すべてが上手くいったとも
言えるだけの傲慢さは持ち合わせてはいない
だが、できる限りのことを精一杯やってきた自負はある
ベッドに腰を掛け、持ち込んだ報告書に目を通す
長い年月を掛け、ようやく開いた国交
今まではそれほど重要では無かった世界の動きが書かれている
まだ各地に残る混乱の後
だが、それも報告を見る限り大した物じゃない
各国とも兵力に欠けは見られるが、動かない限りこれ以上悪いことにはならない
───一カ所を除いて
決断するには意思がいる
切り捨てるには覚悟がいる
まだ年若い子供達がそれを実行するのは難しいだろう
まして、命令される事が当然だった者達だ
報告が上がる度に状態は酷くなっている
ため息が零れる
「まぁ、どうにかするだろう」
しなければ、待っているのは終演
報告書をサイドテーブルへ置き
久しぶりにベッドへと寝転んだ
End
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