置き土産
ふと思いだした
少し気になった
だから、探してみた
それはただの気まぐれ
そのはずだったのだけれど………
この辺りに仕舞ったはず
記憶を頼りに探しているのだけれど、目的の物はなかなか見つからない
「この辺りだと思ったのだけれど」
ただ、探している過程で思ってもいなかった物が見つかって、思わず手に取る
そして時間が流れてしまう
我に返って、再び捜し物を続行する
それを何度か繰り返して───
「可笑しいわね」
確かにこの辺りに仕舞ったはず
それでもこれだけ探して出てこないと言うことは、それが勘違いだという証拠になるのかもしれないけれど
「でも確かにここだったのよねぇ」
恨みがましく向けた視線の先には
中身を全部取り出したせいで何も残っていない空間だけが見える
何もないのだから、ここには無い事は明白
納得しなければならない事
………なんだけど
少しずらした視線の先に見えるのは、取り出した物
「見落としたのかしら?」
たぶんそうじゃない
ってことは気づいている
でも、ね
解ってても納得したくない事ってある、のよねぇ
雑然と部屋の中においた物達にため息が零れる
やったのは私だけれど、これを片付けるのは容易じゃないわ
それが成果を伴わない苦労ならなおさら、ね
モチベーションが違うもの
「仕方ないわね」
どうせ片付けなければいけないのだから
先程最後に取り出した荷物を手に取った
すっかり元に戻った
そのはずだった部屋
「なぜかしらね?」
出した物を元に戻した
そのはずなのに、幾つかの荷物が入らない
入れる順番を間違えたのか
綺麗に収まっていないのか
それとも、別の物を入れてしまった、とか?
それを確認するのにはもう一度やり直す必要があるということなんでしょうけれど
私は黙って、部屋の隅へと荷物を纏める
「良いわよね」
そんなに頻繁に使う部屋でもないし
置いていても邪魔にはならないはずだわ
片付けるのは今度にしましょう
少し気まずい思いをしながら、そのままその部屋を後にした
そして数ヶ月後
その事を綺麗に忘れていた私は、労力を割くことになった
End
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