小さな後悔 
 

 
やりたいこと
やらなければならないこと
やっておいた方がよいこと
色々ありすぎて、何から手をつければ良いか結論が出ない
だから
とりあえず全部先送りにして、何もやることが無いとそう口にしてみる
そんな事を繰り返して
繰り返したからといって、状況が勝手に変わる訳では無く
用件は次第に溜まっていく
限界まで先送りを繰り返して
結局は、納得のいかないまま、やらなければならない事だけを片付ける
それを何度も繰り返して
積もりに積もったやりたいこと
───いい加減手をつけないとなぁ
そう思って
思い続けて時が流れる

「やらない後悔よりもやった後悔っていうぞ」
ふと耳に挟んだ会話
余計なお世話だと言われるのは重々承知しているが、思わず声を掛ける
何もやらずに後悔するよりは、何かをした上での後悔の方が良い
どちらにしろ後悔することが前提なのか
なんてからかいの言葉が傍で聞こえる
「そういや、そうだな」
それを適当にあしらって、おどけてみせる
………後悔しないのが一番なのは確かだけどな
そんなことは解ってる
けれど、な
後悔しないなんてことはあり得ない
何かをすれば必ず後悔する
たとえ上手く行ったとしても、あの部分はこうすれば良かったやら、もう少し上手く出来たはずだなど
何処か後悔する
ただ
その後悔の度合いが大きいか小さいか
その差しか無い
後悔して欲しくない
とか
後悔しない様に
なんて
それは理想だ
子供達にはそんな人生を送って欲しい
そう思うのは当然
けれど、そうはならない事を経験上知っている
昔はそんな事思いもしなかったんだけどなぁ
「まぁ、がんばりな」
後悔が少ない様に
良い後悔ができる様に
今となっては、それが言葉として出す事の無い本音

賑やかな声が聞こえる
明るく楽しげな声になんとなく安堵する
話している内容は解らないが
「悪いことにはなってないだろ」
そう思って───思い込んで意識をそらす
それから手にしていた本を閉じ
「………そろそろどうにかするか」
色々先送りにしてきた事を思い出す
あの時しておけば良かった
とか
もっと早く手をつければ良かった
なんてのも
まぁ、今さら思っても仕方の無い事
本当に、後悔ってのは尽きることが無い


 End